特定技能外国人を雇用するために企業が整える要件
企業などが特定技能外国人を雇用する場合、自社が法令や省令を遵守し、当該外国人と適切な雇用契約を締結し、当該外国人の日本での職業生活上はもちろん、日常社会生活を含めて支援できる体制を整える必要があります。

特定技能外国人を雇用するために企業が整える要件
―特定技能外国人を受け入れるには何から始めればよいか―

 
在留資格『特定技能』の概要特定技能外国人を雇用するために企業が整える要件
 

企業などが特定技能の外国人を受け入れる(雇用する)ためには、事前に確認しなければならないことや、準備しておくことがいくつかあります。特に、1号特定技能外国人を雇用する企業などは、当該外国人が日本での活動を安定的かつ円滑に行うことができるようにするための職業生活上、日常生活上又は社会生活上の支援を実施する義務があります。また、実際に受け入れた後も、その義務を確実に実施することが求められています。

在留資格『特定技能』の基本的なこと

在留資格『特定技能』とは
特定技能は特に人手不足の著しい(生産性向上や国内人材確保のための取組を行ってもなお人材を確保することが困難な状況にある)産業上の分野において、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人を受け入れるための在留資格です。また、
特定技能には『特定技能1号』と『特定技能2号』の2種類があり、「特定技能1号」は、特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格であり、「特定技能2号」は、特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格です。

ここでいう1号の「相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する」とは、『相当期間の実務経験等を要する技能をいい 、特段の育成・訓練を受けることなく直ちに一定程度の業務を遂行できる水準』のことをいいます。一方、2号の「熟練した技能を要する」とは、『長年の実務経験等により身につけた熟達した技能をいい、自らの判断により高度に専門的・技術的な業務を遂行できる、又は監督者として業務を統括しつつ熟練した技能で業務を遂行できる水準』のことをいいます。


受入れ分野(特定産業分野)
特定技能の在留資格は、雇用できる(働くことができる)業種,従事できる業務が決められています。
これは、『生産性向上や国内人材確保のための取組を行ってもなお、人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野(特定産業分野)に限り、不足する人材の確保を図るために、即戦力となる外国人を受け入れる』という、特定技能制度創設の目的によるものです。具体的な特定産業分野は、次のとおりです。
@介護分野 Aビルクリーニング分野 B工業製品製造業分野 C建設分野 D造船・舶用工業分野 E自動車整備分野 F航空分野 G宿泊分野 H自動車運送業分野 I鉄道分野 J農業分野 K漁業分野 L飲食料品製造業分野 M外食業分野 N林業分野 O木材産業分野

特定技能1号は上記の16分野が特定産業分野に該当し、特定技能2号は下線の11分野になります。


特定技能所属機関(受入れ機関)とは
特定技能外国人を実際に受け入れる(雇用する)企業や団体のことを「特定技能所属機関」や「特定技能受入れ機関」あるいは単に「受入れ機関」などといいます。「受入れ機関」は在留資格『特定技能』を有する外国人と直接雇用契約を締結することになります。

登録支援機関とは
特定技能外国人の受入れ機関から委託を受けて、当該外国人に対して様々な支援を実際に行う出入国在留管理庁の登録を受けた機関です。受入れ機関は、当該外国人に対して業務や日常生活を円滑に行えるように、支援計画を作成し当該支援計画に基づいて支援を行うことが義務付けられていますが、支援の実施を登録支援機関に委託することもできます。


定技能外国人を雇用するために企業が整える要件(事前に確認し、準備しておくこと)

受け入れ機関となるには(特定技能外国人を雇用するには)いくつかの要件がありますが、大前提として在留資格『特定技能』は人材不足による外国人人材の確保がその大きな目的です。そのため、特定技能外国人の雇用が必要と認められる産業分野が限られており(特定産業分野)、自社がその特定産業分野に該当するかどうかを事前に確認して雇用を検討する必要があります。

特定技能外国人を雇用することを検討する場合、自社が特定産業分野に該当していることを前提として、自社が労働関係法令、社会保険関係法令、租税関係法令等の法令や省令を遵守し、特定技能外国人と適切な雇用契約(外国人であることを理由に不当な扱いをしない)を締結し、当該外国人の日本での職業生活上はもちろん、日常社会生活を含めて支援できる体制を準備し、整える必要があります。

具体的には、自社が特定産業分野に該当していることを前提として、以下の3つの基準を満たす必要があります。

受入れ機関となるため(特定技能外国人を雇用するため)の3つの基準
受入れ機関となるには、特定産業分野に該当していることに加えて以下の3つの基準を満たしている必要があります。
  1. 受け入れ機関自体が適切か
  2. 特定技能外国人と締結する雇用契約が適切か
  3. 支援計画及び、支援体制が適切か

1.受け入れ機関自体が適切か
特定技能外国人を受け入れる企業として労働関係法令、社会保険関係法令、租税関係法令等の法令や省令を遵守していることが求められます。当然、法令や省令等の違反があれば認められません。

<受け入れ機関自体が満たすべき基準>
@ 労働,社会保険及び租税に関する法令を遵守していること。
A 1年以内に特定技能外国人と同種の業務に従事する労働者を非自発的に離職させていないこと。
B 1年以内に受入れ機関の責めに帰すべき事由により行方不明者を発生させていないこと。
C 欠格事由(5年以内に出入国・労働法令違反がないこと等)に該当しないこと。
D 特定技能外国人の活動内容に係る文書を作成し,雇用契約終了日から1年以上備えて置くこと。
E 特定技能外国人等が保証金の徴収等をされていることを受入れ機関が認識して雇用契約を締結していないこと。
F 受入れ機関が違約金を定める契約等を締結していないこと。
G 支援に要する費用を,直接又は間接に外国人に負担させないこと。
H 労働者派遣の場合は,派遣元が当該分野に係る業務を行っている者などで,適当と認められる者であるほか、派遣先が@〜Cの基準に適合すること。
I 労災保険関係の成立の届出等の措置を講じていること。
J 雇用契約を継続して履行する体制が適切に整備されていること。
K 報酬を預貯金口座への振込等により支払うこと。
L 分野に特有の基準に適合すること。

2.特定技能外国人と締結する雇用契約が適切か
受入れ機関は特定技能外国人と直接雇用契約を締結することになります。特定技能外国人の報酬額や労働時間等が日本人と同等あるいはそれ以上など、雇用契約の内容が法律で定められた基準を満たす必要があります。

<外国人と締結する雇用契約が満たすべき基準>
@ 特定産業分野省令で定める技能を要する業務に従事させ、かつ特定産業分野に特有の基準に適合すること。
A 特定技能外国人の労働時間が、受入れ機関に雇用される通常の労働者の労働時間と同等であること。
B 特定技能外国人に対する報酬額が、日本人が従事する場合の報酬額と同等以上であること。
C 特定技能外国人であることを理由として、報酬の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、差別的な取り扱いをしていないこと。
D 特定技能外国人が一時帰国を希望した場合には、必要な有給休暇を取得させるものとしていること。
E 労働者派遣の対象とする場合は,派遣先や派遣期間が定められていること。
F 外国人が帰国旅費を負担できないときは,受入れ機関が負担するとともに契約終了後の出国が円滑になされるよう必要な措置を講ずること。
G 受入れ機関が外国人の健康の状況その他の生活の状況を把握するために必要な措置を講ずることとしていること。

3.支援計画及び、支援体制が適切か
1号特定技能外国人を受け入れるには、当該外国人が日本での活動を安定的かつ円滑に行うことができるようにするための職業生活上、日常生活上又は社会生活上の支援の実施が求められています。適切な支援計画を策定し、実行できることが満たすべき基準の1つです。
自社で難しい場合は、外部(登録支援機関)へ委託することも可能ですが、費用を負担する必要があります。また、登録支援機関に支援を全部委託する場合には、以下の「受入れ機関が満たすべき支援体制の基準」を満たしているものとみなされます。


<受け入れ機関が満たすべき支援体制の基準>
@ 以下のいずれかに該当すること。
  • ア)過去2年間に中長期在留者(就労資格のみ。以下同じ。)の受入れ又は管理を適正に行った実績があり,かつ,役職員の中から,支援責任者及び支援担当者(事業所ごとに1名以上。以下同じ。)を選任して いること(支援責任者と支援担当者は兼任可。以下同じ)。
  • イ)役職員で過去2年間に中長期在留者の生活相談等に従事した経験を有するものの中から,支援責任 者及び支援担当者を選任していること。
  • ウ)ア)又はイ)と同程度に支援業務を適正に実施することができる者で,役職員の中から,支援責任者及び 支援担当者を選任していること。
A 外国人が十分理解できる言語で支援を実施することができる体制を有していること。
B 支援状況に係る文書を作成し,雇用契約終了日から1年以上備えて置くこと。
C 支援責任者及び支援担当者が,支援計画の中立な実施を行うことができ,かつ,欠格事由に該当しな いこと。
D 5年以内に支援計画に基づく支援を怠ったことがないこと。
E 支援責任者又は支援担当者が,外国人及びその監督をする立場にある者と定期的な面談を実施することができる体制を有していること。
F 分野に特有の基準に適合すること。

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