特定技能外国人を雇用するときに知っておきたいビザ申請手続きの流れ
在留資格『特定技能』の外国人を雇用する(受入れる)には、通常の外国人を雇用する(在留資格を取得する)ためのビザ申請手続きに加えて、『特定技能』特有の手続きが必要になり、事前に確認しておくこと、準備しておくことがいくつかあります。

特定技能外国人を雇用するときに知っておきたいビザ申請手続きの流れ
―在留資格『特定技能』取得のための要件とビザ申請手続き―

 
在留資格『特定技能』の概要特定技能外国人を雇用するときに知っておきたいビザ申請手続きの流れ
 

在留資格『特定技能』の外国人を雇用する(受入れる)には、通常の外国人を雇用する(在留資格を取得する)ためのビザ申請の手続きに加えて、『特定技能』特有の手続きが必要になります。これは、『特定技能』の在留資格取得のための要件が、他の在留資格に比べて産業分野毎の運用方針や上乗せ基準等、より詳細に要件が設定されているためです。そのため、事前に確認しておくこと、準備しておくことがいくつかあり、具体的には以下のようなステップがあります。
  1. 自社に求められる受け入れ要件確認
  2. 雇用予定外国人に求められる要件確認
  3. 雇用契約の内容確認と契約書作成、契約の締結
  4. 支援計画の策定と支援体制の整備
  5. 在留資格取得申請の手続き
などがあります。

具体的な手続きの流れ

1.自社の特定技能外国人の受け入れ要件の確認
特定技能外国人を雇用するために、自社が特定技能外国人を受け入れる要件を満たしているかを確認する必要があります。
  • そもそも、特定技能の在留資格は、雇用できる(働くことができる)業種,従事できる業務が決められています(特定産業分野)。自社がその特定産業分野に該当するかどうかを事前に確認します。
  • 特定産業分野に該当していることを前提として、「労働,社会保険及び租税に関する法令を遵守していること」や「特定産業分野に特有の基準」など、企業が満たすべき基準があります。これらの基準をすべて満たして特定技能外国人を雇用することができます。
2.雇用予定外国人本人の要件確認
受け入れる外国人本人にも在留資格『特定技能』取得の要件があります。企業等が受け入れる要件を満たしているこが確認できれば、採用予定の外国人本人が要件を満たしているかを確認します。
  • 相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事するため、指定された試験(各分野毎の特定技能評価試験及び、日本語能力試験)に合格する必要があります。ただし、技能実習2号を良好に修了した技能実習生は、技能実習2号移行対象職種と特定技能1号における分野(業務区分)との関係について関連性が認められる場合、試験が免除されます。
  • 年齢,健康状態,通算在留期間等の外国人本人に求められる要件を満たしているか確認します。
3.雇用契約の内容確認と契約書作成、契約の締結
特定技能雇用契約と呼ばれる特別の雇用契約の締結が必要になります。
  • 企業側,外国人本人側ともに要件が満たされており、在留資格取得の見込みがあることが確認できれば、特定技能雇用契約の締結が必要になります。契約書に記載する内容は「特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準を定める省令」に定められており、その内容に基づいて作成する必要があります。
  • 雇用契約締結前に、支援計画の1項目である事前ガイダンスを実施することが望ましいですが、在留資格取得申請前にはガイダンスを済ましている必要があります。
4.支援計画の策定と支援体制の整備
特定技能外国人を雇用するにあたって、支援計画を作成するとともに、支援体制の整備が必要です。自社で困難な場合は、外部(登録支援機関)に委託することができます。
  • 雇用契約締結後は、支援計画を策定します。特定技能外国人を受け入れる企業は、特定技能外国人が安定的かつ円滑に日本で活動を行うことができるようにするための職業生活上、日常生活上又は社会生活上の支援の実施に関する計画である『1号特定技能外国人支援計画書』を作成し、当該計画に基づき特定技能外国人の支援を行う義務があります。
  • 受け入れる企業等は、支援計画を策定するにあたって特定技能外国人を支援する体制を整備しなければならず、支援体制に関して満たすべき基準をクリアする必要があります。要件のクリアが困難な場合は、外部に委託することになります。
5.在留資格取得申請の手続き
  • 雇用契約を締結後、支援計画の策定が終われば、必要書類をそろえて在留資格取得を申請します。

関連記事
特定技能外国人を雇用するために企業が整える要件
特定技能外国人を雇用する場合、自社が法令や省令を遵守し、当該外国人と適切な雇用契約を締結し、当該外国人の日本での職業生活上はもちろん、日常社会生活を含めて支援できる体制を整える必要があります。

関連記事
1号特定技能外国人の支援計画の策定と支援の実施
1号特定技能外国人をサポートするために、受け入れ機関には法令で定められた様々な支援が求められます。1号特定技能外国人の生活や仕事が円滑に行えるよう、支援計画を作成し、その計画に基づいて支援を行う必要があります。

在留資格『特定技能』の基本的なこと

在留資格『特定技能』とは
特定技能は特に人手不足の著しい(生産性向上や国内人材確保のための取組を行ってもなお人材を確保することが困難な状況にある)産業上の分野において、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人を受け入れるための在留資格です。また、
特定技能には『特定技能1号』と『特定技能2号』の2種類があり、「特定技能1号」は、特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格であり、「特定技能2号」は、特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格です。

ここでいう1号の「相当程度の知識又は経験を必要とす1る技能を要する」とは、『相当期間の実務経験等を要する技能をいい 、特段の育成・訓練を受けることなく直ちに一定程度の業務を遂行できる水準』のことをいいます。一方、2号の「熟練した技能を要する」とは、『長年の実務経験等により身につけた熟達した技能をいい、自らの判断により高度に専門的・技術的な業務を遂行できる、又は監督者として業務を統括しつつ熟練した技能で業務を遂行できる水準』のことをいいます。


受入れ分野(特定産業分野)
特定技能の在留資格は、雇用できる(働くことができる)業種,従事できる業務が決められています。
これは、『生産性向上や国内人材確保のための取組を行ってもなお、人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野(特定産業分野)に限り、不足する人材の確保を図るために、即戦力となる外国人を受け入れる』という、特定技能制度創設の目的によるものです。具体的な特定産業分野は、次のとおりです。
@介護分野 Aビルクリーニング分野 B工業製品製造業分野 C建設分野 D造船・舶用工業分野 E自動車整備分野 F航空分野 G宿泊分野 H自動車運送業分野 I鉄道分野 J農業分野 K漁業分野 L飲食料品製造業分野 M外食業分野 N林業分野 O木材産業分野

特定技能1号は上記の16分野が特定産業分野に該当し、特定技能2号は下線の11分野になります。


特定技能所属機関(受入れ機関)とは
特定技能外国人を実際に受け入れる(雇用する)企業や団体のことを「特定技能所属機関」や「特定技能受入れ機関」あるいは単に「受入れ機関」などといいます。「受入れ機関」は在留資格『特定技能』を有する外国人と直接雇用契約を締結することになります。

登録支援機関とは
特定技能外国人の受入れ機関から委託を受けて、当該外国人に対して様々な支援を実際に行う出入国在留管理庁の登録を受けた機関です。受入れ機関は、当該外国人に対して業務や日常生活を円滑に行えるように、支援計画を作成し当該支援計画に基づいて支援を行うことが義務付けられていますが、支援の実施を登録支援機関に委託することもできます。

在留資格『特定技能』取得のためのビザ申請要件(1号特定技能)

就労が可能な他の在留資格と同様に『特定技能』の在留資格も基本的には、在留資格該当性上陸許可基準省令適合性を提出書類で立証すれば在留資格が許可されます。ですが、特定技能の場合は、特定技能特有の基準があります。在留資格該当性と上陸許可基準省令適合性を判断する基準として、「特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令」(特定技能基準省令)や産業分野ごとの運用方針や上乗せ基準など、より詳細な基準が設けられています。その点が他の在留資格と異なります。
在留資格該当性
在留資格該当性とは、外国人が日本で行う予定の活動内容が、入管法上、在留資格毎に規定されている「行うことができる活動内容」と一致していることを言います。
1号特定技能の在留資格で規定されている活動は、要約すると「法務大臣が指定する本邦の公私の機関との雇用に関する契約に基づいて行う特定産業分野であって、相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する活動(1号特定技能)」となります。


法務大臣が指定する本邦の公私の機関
1号特定技能外国人を雇用する機関(企業等)は特定技能基準省令で定められている要件を満たす必要があります。社会保険に加入していることや納税義務を履行している、1年以内に特定技能外国人と同種の業務に従事する労働者を非自発的に離職させていない等、いわゆる企業等が満たすべき受け入れ要件になります。また、1号特定技能の特徴として、当該外国人に対する支援が義務づけられています。入国前の情報提供、出入国時の送迎、住宅の確保などの支援内容を記載した1号特定技能支援計画の策定と計画に基づく支援の実施が行える支援体制が企業等が満たすべき要件になります。ただし、支援の実施を、契約により外部(登録支援機関)に全部委託した場合は支援体制の要件を満たしているとみなされます。

雇用に関する契約
1号特定技能外国人を雇用する機関(企業等)は当該外国人と「特定技能雇用契約」と呼ばれる雇用契約の締結が必要です。この雇用契約についても特定技能基準省令で内容が定められており、特定産業分野省令で定める技能を要する業務に従事させ、かつ特定産業分野に特有の基準に適合すること、特定技能外国人の労働時間が、受入れ機関に雇用される通常の労働者の労働時間と同等であること、特定技能外国人に対する報酬額が、日本人が従事する場合の報酬額と同等以上であることなど、いわゆる、雇用契約が満たすべき要件になります。

特定産業分野
あらかじめ定められた特定の産業分野に該当する業務を行う必要があり、その分野以外の業務は在留資格該当性がありません。在留資格『特定技能』の大前提になります。

相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務
従事する業務が、あらかじめ定められた特定の産業分野に該当する業務であったとしても、その業務が、相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務でなければ在留資格該当性はありません。相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要するとは、当該特定産業分野における相当期間の実務経験等を要する技能をいいます。


 
要するに、受け入れ及び支援体制の要件を満たしている機関(企業等)が要件を満たしている特定技能雇用契約に基づいて特定産業分野に該当する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事させ、支援計画に基づく支援を実施する場合に在留資格該当性が認められることになります。


関連記事
特定技能外国人を雇用するために企業が整える要件
特定技能外国人を雇用する場合、自社が法令や省令を遵守し、当該外国人と適切な雇用契約を締結し、当該外国人の日本での職業生活上はもちろん、日常社会生活を含めて支援できる体制を整える必要があります。
上陸許可基準省令適合性(1号特定技能外国人本人に関する基準)
上陸許可基準省令適合性とは、在留資格該当性があると思われる外国人本人が、日本に上陸するための条件を満たしていること言いいます。
1号特定技能外国人は以下のような基準があります
  1. 年齢
  2. 健康状態
  3. 退去強制の円滑な執行への協力
  4. 保証金の徴収,違約金を定める契約
  5. 費用負担の合意
  6. 送り出し国において遵守すべき手続き
  7. 技能水準,日本語能力
  8. 通算在留期間
  9. 分野特有の基準
具体的な内容は以下のような内容です。
年齢
18歳以上。日本に上陸する時点で18歳以上であることが必要です。

健康状態
健康状態が良好であることが必要です。特定技能外国人が、特定技能に係る活動を安定的かつ継続的に行うことを確保する観点等から、当該外国人の健康状態が良好であることを求められます。

退去強制の円滑な執行への協力
退去強制令書の円滑な執行に協力する外国政府が発行した旅券を所持していること。

保証金の徴収,違約金を定める契約
特定技能外国人本人やその親族等が保証金の徴収や財産の管理又は、違約金契約を締結させられていないこと。

費用負担の合意
特定技能外国人が入国前及び在留中に負担する費用(特定技能の活動の準備に関して外国の機関に支払っている費用,日本で生活するうえで支払う食費や住居費など定期に負担する費用等)の額やその内訳を十分に理解して、当該機関との間で合意していること。また、その額が適正な額であり、当該費用の明細書その他の書面が提示されていること。

送り出し国において遵守すべき手続き
特定技能外国人が、特定技能に係る活動を行うに当たり、海外に渡航して労働を行う場合の当該本国での許可等、本国において必要な手続が定められている場合に、当該手続きを経ていること。

技能水準,日本語能力
必要な技能及び日本語能力を有していることが、試験その他の評価方法により証明されていること(ただし、技能実習2号を良好に修了している者であり、かつ、技能実習において修得した技能が、従事しようとする業務において要する技能と関連性が認められる場合は、これに該当する必要がない)。

通算在留期間
特定技能1号での在留期間が通算して5年に達していないこと。「通算」とは、特定産業分野を問わず、在留資格「特定技能1号」で過去に在留していた期間も含まれます。

分野特有の基準
特定産業分野ごとの特有の事情に鑑みて個別に定める基準に適合していること。

 
企業等が、受け入れ機関に求められている基準を満たし、適切な支援計画のもと、外国人を支援する体制を整え、上陸許可基準を満たしている外国人本人と適切な雇用契約を締結することにより、在留資格『特定技能』取得の申請(ビザ申請)が可能になり、申請書類に加えて、全ての要件を満たしていることを立証する書類を添えて申請手続きを行います。

関連記事
外国人を雇用(採用)する時に知っておきたいビザ手続
外国人を採用する状況によってビザ申請の手続は異なり、また審査に要する時間も1,2週間から3か月程度かかるものまであります。就労ビザの取得や更新,変更が不許可になると外国人を雇用できなくなるので、ビザ申請は手続の流れを知り、計画性をもって申請する必要があります。

関連記事
『特定技能』ビザの取得に必要な申請書類の概要
特定技能ビザ取得のための必要な書類は、就労が可能な他の在留資格と同様に基本的には、申請書類に加えて、在留資格該当性と上陸許可基準省令適合性を満たしていることを立証する書類を提出します。

ビザ申請,在留手続き等で困り事はありませんか?。専門家への相談が近道です。


外国人ご本人や事業主の状況に応じた必要書類を調べることや、不慣れな申請書類作成には時間と労力がかかります。在留手続きの申請ごとに必要となる書類を見極め、適切な書類を選定し、許可要件を満たしていることを法律に基づき論理的に説明した資料を作成し、説明不足による不許可リスクを低減します。当オフィスでも申請書類作成から申請手続きまで一括して代行いたします。