外国人を雇用(採用)する時に知っておきたいビザ手続き
外国人を採用する状況によってビザ申請の手続は異なります。また、就労ビザの取得や更新,変更の申請手続きで不許可になると外国人を雇用できなくなります。ビザ申請は手続の流れを知り、計画的に申請する必要があります。

外国人を雇用(採用)する時に知っておきたいビザ手続き

 
在留資格(就労ビザ)の取得・更新・変更等の申請のサポート外国人を雇用する時に知っておきたいビザ手続
 

日本の大学を卒業した留学生を採用することになった。他社に勤めていた外国人を中途採用することになった。など、外国人を自社で雇用するときは就労ビザ(就労が認められる在留資格)が必要になります。

外国人を採用する状況によってビザ申請の手続は異なり、また審査に要する時間も1,2週間から3か月程度かかるものまであります。就労ビザの取得や更新,変更が不許可になると外国人を雇用できなくなるので、ビザ申請は手続の流れを知り、計画性をもって申請する必要があります。


ビザ(査証)と在留資格
ビザ(査証)
世間では、在留資格のことをビザと呼んだりしますが、正確には在留資格=ビザではありません。ビザ(査証)は、日本に上陸(入国)するための通行証のようなものです。
「上陸目的などを事前にチェックした結果、上陸しても差支えないと判断しました。」と、上陸の審査にあたる入国審査官に対して、紹介する文書のようなものです。ただ、ビザ(査証)=上陸許可ではありません。ビザ(査証)の発給を受けていても(紹介する文書があっても)、入国審査官の審査の結果、他の上陸許可の要件を満たしていない場合、許可されない場合もあり得ます。

在留資格(就労ビザ)
一方、在留資格は、日本に在留する(滞在して留まる)ための法的地位,資格のようなもので、外国人が日本に滞在して行うことができる活動の種類を類型化したもので様々な種類があります。様々な目的で来日し、日本で活動しようとする外国人は、この在留資格と在留期間を与えられ、この資格と期間に基づいて日本に滞在し、活動することになります。言い方を変えれば、類型化して定められた在留資格のいずれかに対応する活動に該当しなければ、この在留資格を得ることはできません
学校で勉強をするのであれば「留学」という在留資格を得る必要があります。働いて収入を得るのであれば、仕事の種類や内容等活動の目的に合った在留資格を取得する必要があります。働くことを内容とする様々な在留資格(就労が認められる在留資格)を俗称ですが、世間一般では、まとめて就労ビザと呼ぶことがあります。

外国人雇用のビザ手続の流れ

就労ビザ申請手続の流れとしては、おおよそ以下のような4つのステップが考えられます。
  1. 就労ビザ(就労が認められる在留資格)の種類特定と許可見込みの確認
  2. 採用決定後、雇用契約書または採用通知書等の作成
  3. 申請手続の特定,必要書類の調査・収集・作成と申請
  4. 就労ビザ(就労が認められる在留資格)許可後、雇用開始
また、採用を検討している外国人の以下のような現在の状況
  • 海外に住居している外国人を日本に呼び寄せる
  • 既に何かしらの在留資格を持って在留している外国人を中途採用する
  • 日本に留学中の留学生を採用する
によって、申請手続きが異なることにも注意が必要です。
外国人を雇用する時、申請手続のポイント
「自社で従事する業務に該当する就労ビザ(就労可能な在留資格)は何か」,「採用予定の外国人の現在状況から、その就労ビザの許可を得る申請手続きは何か」という2点を明確にした後、申請の手続を進めます。


ステップ1. 就労ビザ(就労が認められる在留資格)の種類特定と許可見込みの確認
最初の重要なステップは、外国人の採用を決定する前に、就労ビザ(就労が認められる在留資格)の許可を得ることができるかどうかを調査,確認することです。採用を決定しても、就労ビザの許可を得ることができなければ、外国人を雇用することはできません。また、許可を得ず雇用すると不法就労の罪に問われます。

就労ビザ(就労が認められる在留資格)の特定
許可の可能性を調査するうえで初めに確認することは「採用後、外国人に従事してもらう業務内容に該当する就労ビザ(就労が認められる在留資格)の種類はどれか」ということです。就労が認められる在留資格には様々な種類がありますが、在留資格毎に活動できる内容(従事できる業務内容)が決まっています。従事してもらう業務に該当する在留資格が無ければ、当然に許可は得られません。


就労ビザについて確認すべきポイント
就労が認められる在留資格には様々な種類があるとともに、許可の要件があります。要件は各在留資格毎に定められていますが、就労系の在留資格におおよそ共通する要件として、以下の3点が考えられます。
どのような人(外国人)が」、「どのようなところで」、「どのような活動(業務)をするのか」、ということです。3つの点を考慮して確認すべきポイントは、
  • 外国人本人の学歴若しくは職歴
  • 採用後に従事させようとしている業務内容に一貫性(関連性)があり
  • 採用する企業が事業の安定性・継続性・収益性・雇用の必要性などを有しているか
といった点になります。

ステップ2. 採用決定後、雇用契約書または採用通知書等の作成
採用することが決まれば次のステップで雇用契約書や採用通知書などを作成します。これらの書類は申請時に必要となる書類の1つで、書き方に決まりはありません。通常の日本人従業員の契約書と同じで問題ありませんが、以下の点に注意が必要です。
  • 報酬額は日本人と同等以上
  • 従事する業務内容は採用する外国人の学歴若しくは職歴と関連性があること
また、採用は就労ビザの許可を得ることを前提としているので、以下のような文を記載します。
「この契約は日本の正当で就労可能な在留資格の許可及び在留期間の更新を条件として効力を有する」

ステップ3.申請手続の特定,必要書類の調査・収集・作成と申請
ステップ1.で申請する就労ビザ(就労可能な在留資格)の種類が特定できれば、次に、その就労ビザを得るために必要な申請手続を特定します。

就労ビザを得るための申請手続の特定
外国人を採用するとき、一般的には以下の3つの状況が考えられます。
  • 海外に住居している外国人を日本に呼び寄せる
  • 既に何かしらの在留資格を持って日本に在留している外国人を中途採用する
  • 日本に留学中の留学生を採用する
採用を予定している外国人本人の現在の状況によって就労ビザ申請手続の種類が異なります。
「海外に住居している外国人を日本に呼び寄せる」場合の申請手続きは、在留資格認定証明書交付申請の手続です。
「既に何かしらの在留資格を持って在留している外国人を中途採用する」場合の申請手続きは、在留資格変更許可申請または、在留期間更新許可申請の手続です。
「日本に留学中の留学生を新規に採用する」場合の手続は、在留資格変更許可申請の手続です。


在留資格認定証明書交付申請の手続
海外に居住する外国人を日本に呼んで雇用する場合に行う申請手続きです。

通常、採用する企業側が在留資格認定証明書の交付を申請します。在留資格認定証明書が発行されれば、その原紙を海外にいる採用予定の外国人に送付します。受け取った外国人は在外の日本国大使館あるいは総領事館に在留資格認定証明書を提示して就労ビザを申請します。特段の問題がないかぎり速やかにビザ(査証)が発給されます。

ただし、在留資格認定証明書には有効期限があり、発行から3か月の有効期限です。3か月以内に日本に入国する必要があります。


在留資格変更許可申請の手続
採用しようとする外国人が既に在留資格を持って日本に居住しているが、その在留資格で定められている活動内容が、採用後の活動内容(業務内容)に該当していない場合に行う申請手続です。典型的には在留資格『留学』の留学生が日本の企業に就職する場合です。

採用後に従事する予定の業務に該当する就労ビザの種類を特定し、在留資格変更許可の申請を行います。


在留期間更新許可申請の手続
採用しようとする外国人が既に就労ビザを持って日本に居住しており、その就労ビザで定められている活動内容が、採用後の活動内容(業務内容)に該当していると判断できる場合に行う申請手続です。この場合、外国人の在留カードの在留期間の確認が必要です。残りの期間が6ヶ月を切るようであれば更新許可申請を検討しますが、残りが6か月以上であれば、以下の就労資格証明書交付申請の手続を検討します。

また、就労ビザは活動内容のみではなく活動場所(採用企業)も含めて審査されます。前職の就労ビザで自社でも該当しているとは限りません。更新許可申請を行ったときに不許可となる可能性もあります。そのときは、継続して雇用することはできません。そのようなリスク避けるためにも、中途採用後は就労資格証明書の交付申請を検討します。

ただし、転職を伴う就労資格証明書の交付はおおよそ1か月から3か月ほどの審査期間を要します。在留期限を確認し、余裕をもって申請の準備をしましょう。


就労資格証明書交付申請の手続
日本で働く外国人は皆この就労資格証明書を必ず持っている必要はありませんが、既に日本に在留している外国人を中途採用しようとする場合は、その外国人を採用しても問題がないことをあらかじめ確認することができます。

また、外国人本人も転職後も継続して就労ビザを得られることを確認したいと思います。そのようなときに、就労資格証明書を活用します。

就労資格証明書の交付を申請することによって、中途採用することに問題が無いかどうか、また、転職先で在留資格の更新(就労ビザの延長)ができるかどうかを事前に確認することができます。


確認するポイント
必要な手続きは、採用しようとする外国人の現在の状況(在留資格の有無,有の場合、現に有する在留資格の種類・残期間など)と採用後の従事する業務内容によって決まってきます。

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必要書類の調査・収集・作成と申請
就労ビザを得るための申請手続が特定できれば、必要書類を収集・作成し、採用企業の所在地を管轄する地方出入国在留管理局に申請します。

申請に必要な提出書類は、申請する就労ビザ(就労可能な在留資格)の種類、申請手続種類毎に異なります。就労ビザ関係の必要書類として概ね以下のような資料が必要です。
  • 申請書(在留資格認定証明書,在留期間更新許可,在留資格変更許可,就労資格証明書など申請手続きそれぞれの申請書)
  • 外国人本人の証明写真
  • 返信用封筒
  • 外国人本人の学歴・職歴等を証する資料(卒業証明書,成績証明書,過去の勤務先の在職証明書等)
  • パスポート
  • 履歴書
  • 勤務先や活動内容(業務内容)の詳細がわかる資料として
    • 勤務先の前年分の職員の給与所得の源泉徴収票の法定調書合計票
    • 勤務先の履歴事項全部証明書
    • 勤務先の概要や会社案内,定款,登記簿,直近の決算書(損益計算書,貸借対照表など)の写しなど
  • 雇用(採用)理由書
  • 雇用契約書や採用通知書
などですが、審査の状況により追加の提出資料を求められることもあります。詳細は法務省のホームページにも掲載されています。

審査に要する時間は就労ビザの種類,申請手続きによって異なりますが、概ね早くて2,3週間、時間がかかる場合は2ヶ月から3か月程度を要します。計画的に申請手続きを進めるようにしましょう。

ステップ4.就労ビザ(就労が認められる在留資格)許可後、雇用開始
就労ビザの許可を得れば、雇用開始です。在留資格認定証明書の場合は、原紙を海外の採用予定外国人に送付し、現地の日本国大使館あるいは総領事館でビザ(査証)を申請し、3か月以内に入国する必要があります。

就業が始まれば、従事する業務内容に注意が必要です。就労ビザで認められている内容の業務以外は従事することはできません。


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