一部合意を書面にするときの注意点話し合いの途中で決まったことだけ書面にできる?

話し合いをしている途中で、「金額については決まった。でも支払方法はまだ決まっていない」「契約を終了することは決まった。でも返金については話し合いが続いている」「借金が残っていることは双方確認した。でも毎月いくら返済するかは決まっていない」ということがあります。

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このような場合、「全部決まっていなくても、決まったことだけ先に書面にしておくことはできる?」と考えることがあります。話し合いの途中でも、当事者間ですでに合意した事項を書面にすることは考えられます。しかし、ここで注意したいのは、「途中で作った書面だから法的な意味はない」とは限らないことです。

反対に、「書面にして署名・押印しておけば、必ずその内容が確定する」と単純に考えることもできません。重要なのは、

  • 何について合意したのか
  • 何についてはまだ合意していないのか
  • 今回の書面によって何を確定させたいのか
  • 今後、何について話し合うのか

を整理することです。

このページでは、和解、借金・債務の返済、契約解除などの話し合いの途中で、決まった事項だけを書面にするときの考え方、具体的な書き方、注意点について解説します。

話し合いの途中で決まったことだけ書面にできる?

例えば、トラブルについて話し合っている途中で、「解決金を50万円にする」という点については双方の認識が一致したものの、「いつ支払うのか」「一括払いなのか分割払いなのか」「50万円の支払いによって何を解決済みとするのか」については、まだ話し合いが続いている場合があります。このような場合、すでに決まった「解決金50万円」という事項だけを書面にすることは考えられます。

ただし、「決まったことだから、とりあえず書面にしておこう」と考える前に確認したいことがあります。それが、「今回の書面によって何を確定させるのか」という点です。

まず考えたいのは「何のために書面を作るのか」

話し合いの途中で作る書面には、さまざまな目的が考えられます。例えば、「すでに合意した事項を確定させたい」という場合があります。一方、「現在の話し合いの状況を確認しておきたいだけ」という場合もあります。さらに、「最終的な契約書を作成する前提として、現時点で決まっている事項を整理しておきたい」という場合もあります。この違いは重要です。

例えば、

甲及び乙は、本件の解決金を金500,000円とすることに合意する。

という文章と、

甲及び乙は、現在、本件の解決金を金500,000円とすることを前提として協議していることを確認する。

では、文章が示そうとしている内容が違います。前者は「50万円とすることについて合意した」という文章です。後者は「現在の協議状況を確認する」という文章です。したがって、書面を作成するときには、書類名を考える前に、この書面は何のために作るのかを考える必要があります。

話し合いの途中では「一部だけ決まっている」ことがある

すべての条件について一度に合意できるとは限りません。具体的に考えてみましょう。

ケース1 和解について話し合っている

甲と乙との間で損害賠償について話し合い、解決金を50万円とすることには合意したものの、支払期限や分割払いについてはまだ決まっていないという場合です。

ケース2 借金の返済について話し合っている

貸した金銭について、現在の残債務が80万円であることについては双方確認したものの、毎月いくら支払うのか、いつまでに完済するのかについては決まっていないという場合です。

ケース3 契約解除について話し合っている

契約について、契約を終了すること自体については合意したものの、支払済み代金の返金、未払金、物品の返還などについては話し合いが残っているという場合です。

これらに共通しているのは、話し合い全体は終わっていないが、一部の事項については当事者間で認識が一致しているという点です。このような場合に途中の書面を作るのであれば、合意済みの事項と未合意の事項を明確に区別することが非常に重要になります。

「合意済み」と「未合意」を分けて書く

例えば、「解決金50万円で話がまとまった」というだけでは、支払期限まで決まったのか、支払方法まで決まったのか、50万円を支払えばすべて解決することまで決まったのか、必ずしも分かりません。そこで、書面では、すでに合意した事項と、まだ決まっていない事項を分けて記載する方法があります。

一部について合意した場合の条項例

第1条(合意事項)

甲及び乙は、本件の解決金を金500,000円とすることについて合意する。

第2条(今後の協議事項)

前条の解決金の支払期限及び支払方法については、甲乙間で引き続き協議する

この例では、

解決金額 → 合意済み

支払期限 → 未合意

支払方法 → 未合意

という区別をしています。ただし、この文例をそのまま使用すればよいという意味ではありません。重要なのは、実際にどこまで話がまとまっているのかと、今回の書面によってどこまでを確定させたいのかが一致していることです。

「合意した」と「確認した」は同じ意味ではない

途中の書面では、「合意する」「確認する」「協議する」「予定する」など、さまざまな言葉が使われます。例えば、

甲及び乙は、本件の解決金を金500,000円とすることに合意する。

と、

甲及び乙は、本件の解決金として金500,000円が提示されていることを確認する。

では意味が違います。また、

甲及び乙は、令和○年○月○日までに支払方法について協議する。

と書いた場合でも、支払方法そのものが決まったわけではありません。文章を作るときには、

  • 何について権利義務を確定させたいのか
  • 何については単に現在の状況を確認するだけなのか

を意識する必要があります。

途中で作った合意書にも法的な意味はある?

「最終的な契約書ではないから、途中で作った書面には法的な意味がない」とは一概にはいえません。契約は、原則として当事者の意思表示が合致することによって成立するものであり、すべての契約について「正式な契約書」を作成しなければ成立しないわけではありません。

そのため、話し合いの途中であっても、一定の事項について当事者双方が確定的に合意している場合には、その合意について法的な意味が問題となることがあります。したがって、「まだ途中だから大丈夫」「仮の書面だから効力はない」と決めつけることはできません。

逆に、書面が存在するだけで、そこに記載されたすべての内容について最終的な合意が成立したと単純に判断できるとも限りません。書面の文言だけでなく、何についてどのような意思で合意したのかが重要になります。

契約書・合意書・念書・覚書・確認書――タイトルで効力は決まる?

話し合いの途中で書面を作ろうとすると、「正式な契約書ではなく、覚書にしておけばよいのでは?」「念書なら契約書ほど強くないのでは?」「確認書なら単なる確認だから大丈夫では?」と考えることがあります。しかし、書面の法的な意味はタイトルだけで決まるものではありません。例えば、「覚書」というタイトルでも、

甲が乙へ○○円を支払うことについて双方が合意する

という内容であれば、その合意内容に応じた権利義務が問題となります。一方、「契約書」というタイトルでも、まだ交渉途中の案を記載しただけで、当事者間で確定的な合意に至っていないのであれば、契約成立の有無について別途検討が必要になります。

大切なのは、「契約書なのか」「合意書なのか」「念書なのか」「覚書なのか」という名称から考えることではありません。先に、「誰と誰が、何について、どこまで合意したのか」を整理することが重要です。

書類のタイトルの違いと法的効力についてを詳しく知りたい方へ

書類のタイトルの違いと法的効力について、別の記事で詳しく説明しています。

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【「契約書や合意書,念書等のタイトルの違いと法的効力について」を詳しく見る】  契約書や合意書,念書等の書類のタイトルの違いについて解説しています。

「今後協議する」と書けば、それ以外も未確定になる?

途中の合意書では、

その他の事項については、甲乙間で引き続き協議する。

という条項を入れることがあります。しかし、この一文を入れれば、すでに記載した事項まで当然に未確定になるとは限りません。例えば、

第1条 甲及び乙は、本件の解決金を金500,000円とすることについて合意する。
第2条 前条の解決金の支払期限及び支払方法については、甲乙間で引き続き協議する。

と書けば、文章上は、「金額については合意した」一方で、「支払期限・支払方法については今後協議する」という構成になっています。つまり、「今後協議する」と書くこと自体よりも、何が合意済みで、何が未合意なのかを具体的に分けることが重要です。

残りの条件について合意できなかった場合はどうなる?

一部だけ先に書面化するときに、特に考えておきたい問題です。例えば、

解決金50万円について合意

 ↓

支払期限・支払方法について引き続き協議

 ↓

結局、残りの条件について話し合いがまとまらなかった

という場合です。このとき、「50万円という合意だけは確定したものとして残すのか」それとも、「支払方法等も含めた最終的な和解が成立することを前提としていたので、最終合意に至らなければ50万円という話も確定させないのか」という違いが問題になる可能性があります。

したがって、途中の書面では、「一部の合意を独立して確定させるのか」それとも、「最終的な契約成立を前提とした途中段階の確認にとどめるのか」という点についても検討する必要があります。

最終的な契約書との関係も考える

途中で一部の事項を書面化した後、残りの条件についても話し合いがまとまり、最終的な契約書を作成することがあります。例えば、

第1段階

解決金50万円について合意

↓

第2段階

途中の合意書を作成

↓

第3段階

支払期限・分割回数・清算範囲について協議

↓

第4段階

すべての条件が決まり、最終的な和解契約書を作成


という流れです。この場合には、「途中の合意書を最終契約にどのように反映するのか」も考える必要があります。途中で決めた事項を最終契約書へ改めて記載するのか。最終契約書によって、それまでの合意内容をまとめて整理するのか。途中の書面と最終契約書に矛盾がないか。複数の書面を作成する場合には、一つ一つの書面だけではなく、書面同士の関係も確認することが重要です。

和解の話し合い途中で決まったことを書面にする場合

和解の話し合いでは、「解決金額は決まったが、支払方法は決まっていない」という場合があります。この場合には、

  • 何について争いがあるのか
  • 何について合意したのか
  • 何についてはまだ合意していないのか

を明確にします。

すべての解決条件について協議が整った場合には、それらを整理して最終的な和解契約書・和解合意書を作成することが考えられます。和解契約書には、解決金だけでなく、支払期限、支払方法、清算する範囲など、今回のトラブルをどのように終わらせるのかを具体的に記載することが重要です。

和解契約書の書き方・条項例を詳しく知りたい方へ

「まずは自分で和解契約書を作ってみたい」「和解契約書には何を書けばよいのか知りたい」「清算条項とは何か知りたい」「実際の条項例を見てみたい」という方のために、別の記事で詳しく説明しています。

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借金・債務の返済について途中で決まったことを書面にする場合

お金の貸し借りでは、「借金が残っていることは認めている」ものの、「毎月いくら返済するのか」「いつから返済するのか」「いつまでに完済するのか」について話し合いがまとまっていないことがあります。この場合にも、「債務そのものについて何を確認したのか」と、「返済条件について何が未確定なのか」を分けて考えることが重要です。

例えば、「残債務が80万円であることは確認した」としても、毎月の返済額、支払日、完済期限などについては別途協議が必要な場合があります。最終的に債務額と返済条件が決まった場合には、債務承認弁済契約書などとしてまとめて文書化する方法があります。

お金を貸した後から作成する債務承認弁済契約書について詳しくはこちら

契約解除について途中で決まったことを書面にする場合

契約解除・契約終了についても同じ問題があります。例えば、「契約を終了することについては合意した」ものの、「返金については決まっていない」「未払金については決まっていない」「物品の返還については決まっていない」という場合です。

契約を終了させることについての合意と、契約終了後の金銭・物品等の清算条件は、分けて考える必要がある場合があります。したがって、「契約をいつ終了させるのか」「返金・未払金はどうするのか」「物品等の返還は必要なのか」「契約終了後にも残る義務はあるのか」などについて確認します。

契約解除合意書の書き方や記載事項について詳しく知りたい方へ

契約解除合意書に記載する主な条項や、作成する際の注意点については、別の記事で詳しく説明しています。契約解除合意書の書き方を確認したい方や、契約解除通知書との違いについて知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

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「とりあえず念書を書いてもらう」と考える場合

話し合いの途中で、「正式な契約書では大げさだから、とりあえず念書を書いてもらおう」と考えることもあります。しかし、「念書」というタイトルにすれば法的な意味が弱くなるとは限りません。念書についても、

  • 誰が作成するのか
  • 誰に対する約束なのか
  • 何を約束するのか

など、その内容が重要です。また、当事者双方の合意内容を記載するのであれば、そもそも「念書」という名称が適切なのかについて検討した方がよい場合もあります。したがって、
「とりあえず念書にしておけばよい」と考えるのではなく、「何を記録し、何を約束し、何を確定させたいのか」から書面を考えることが重要です。

合意書・念書・覚書…などどの書類を作ればよいか分からない場合

「決まったことを書面にしたい」と思っても、「合意書」なのか「念書」なのか「覚書」なのか「確認書」なのか「契約書」なのか分からないことがあります。しかし、最初から書類名を決める必要はありません。書面を作るときに先に整理したいのは、

  • 誰と誰の間で
  • 何について話し合い
  • 何について合意し
  • 何についてはまだ決まっておらず
  • 何のために今回の書面を作るのか

という点です。これらを整理した結果として、その内容に適した書面を検討します。「どの書類を作ればよいか分からない」こと自体は、書面作成を検討できない理由にはなりません。

話し合いの途中で書面を作成するときの7つの注意点

1.何のために書面を作るのかを最初に決める
  • 合意した事項を確定させるためなのか。
  • 現在の話し合いの状況を確認するためなのか。
  • 最終契約の前段階として整理するためなのか。

目的によって文章の作り方が変わります。

2.合意済みの事項を具体的にする

「だいたい決まった」ではなく、「何について双方が合意したのか」を確認します。

3.未合意事項を明確にする

まだ決まっていないことを、決まったかのように書いてはいけません。必要に応じて、今後協議する事項として合意済み事項と区別します。

4.「合意」「確認」「協議」などを使い分ける

何について権利義務を確定させるのか、何について現状を確認するだけなのかを考えます。

5.残りの条件がまとまらなかった場合を考える

一部合意後に残りの条件について合意できなかった場合、先に書面化した事項をどう扱うのかという問題があります。
途中の書面を作る段階で検討しておきたいポイントです。

6.書面のタイトルだけで判断しない

「覚書だから軽い」「念書だから契約ではない」「確認書だから拘束されない」と単純に考えることはできません。
名称より実際の内容と当事者の意思が重要です。

7.最終契約との関係を考える

後から正式な契約書を作成する予定であれば、途中の書面を最終契約でどのように扱うのかも考えます。

途中の書面を自分で作成しやすいケース・文案作成を検討したいケース

内容が単純で、

  • 何について合意したのか
  • 何についてはまだ合意していないのか
  • 今回の書面を何のために作るのか

が明確であれば、自分で書面を作成できる場合もあります。

一方、「話し合いは進んでいるが、合意済みと未合意の境界が分からない」「金額だけ先に書面にしたいが、残りの条件が決まらなかった場合が心配」「最終的に別の契約書を作る予定がある」「合意書・念書・覚書のどれにすればよいか分からない」「自分で文章を作ったが、どこまでを確定させる内容になっているのか分からない」という場合には、書面の名称を決める前に、書面化する内容を整理する必要があります。

特に途中段階の書面では、「何を書くか」だけでなく、「その書面によって何を確定させるのか」という視点が重要です。

決まったことを「とりあえず書く」のではなく、書面の意味を考える

話し合いの途中で決まったことを書面に残すことは、「そんな話はしていない」「そこまでは決まっていなかった」といった後の認識の違いを防ぐために役立つ場合があります。

一方で、曖昧な途中書面を作ったことで、「これは最終的な合意だったのか」「まだ交渉途中だったのか」「この条項だけは確定していたのか」という新たな問題が生じる可能性もあります。

そのため、

  • 何が決まったのか
  • 何が決まっていないのか
  • 何を今回確定させるのか
  • 何を今後話し合うのか

を整理したうえで書面にすることが重要です。

途中の書面では「決まったこと」と「決まっていないこと」を分ける

話し合いの途中であっても、すでに決まった事項を書面にすることは考えられます。しかし、「途中だから法的な意味はない」「覚書だから正式な契約ではない」「念書だから契約書より効力が弱い」と単純に考えることはできません。途中の書面を作成するときには、

  1. 何のために書面を作るのか
  2. 何について合意したのか
  3. 何についてはまだ合意していないのか
  4. 今回の書面によって何を確定させるのか
  5. 残りの条件がまとまらなかった場合にどうするのか
  6. 最終的な契約書とどのような関係にするのか

を整理することが重要です。大切なのは、「決まったことを、とりあえず書いておく」ことではありません。「この書面によって何を決め、何をまだ決めないのか」を明確にして文章にすることです。

話し合った内容を書面にしたい。でも、何を作ればよいか分からない方へ

話し合った内容を書面にしたいと思っても、「合意書にすればよいのか」「念書なのか」「覚書なのか」「和解書なのか」「契約書にすべきなのか」書類の種類から迷うことがあります。最初から書類名を決めていただく必要はありません。

当オフィスでは、当事者間で合意・確認できている内容と、何のために書面を作成するのかを確認し、その内容に応じた文案を作成します。合意書、念書、覚書、和解書、契約書など、プライベートな場面で必要となる法律文書について、当事者間で決まった内容を、どのように文章にすればよいか分からないという場合に、文案作成を利用する方法があります。なお、相手方との条件交渉そのものを代理するサービスではありません。

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代表 行政書士 辻下仁雄

        Profile
        大学で応用数学を学び、システムエンジニアとしてIT関連企業に勤務。2017年行政書士事務所を開業し現在に至る。
        申請取次行政書士    2級ファイナンシャルプランニング技能士