契約を解除することについて当事者双方が納得して合意していることを前提として、契約解除合意書のような書面を作成します。先に締結している契約で定められた解除事由に該当した場合や、契約違反があった場合など、一般的な意味での解除の場合は、解除する当事者の一方的な意思表示によって行い、相手方の同意は不要です。が、合意解除の場合は、あくまでも契約当事者双方の合意を前提としています。双方納得して契約を解除しますが、契約関係を明確にする意味でもこのような書面を作成した方が後々のトラブルの防止になります。
契約解除の合意書は、あくまでも契約当事者の合意を前提として作成するので、解除合意に至るまでに何らかの話し合いがもたれていることが通常です。平たく言えば、その話し合いの中でお互い取り決めたことを書面にすれば問題はありません。が、基本となるポイントは
1.解除する契約の特定
2.解除日
3.原状回復義務の内容
4.清算条項
です。
解除することに合意した契約がどの契約かを特定することです。通常は先行契約の「締結日」と「契約名」で特定します。折角、話し合って合意してもどの契約を解除したのかが曖昧であれば、後々のトラブルの原因になります。例えば、
○○○○(以下、「甲」という。)と○○○○(以下、「乙」という。)は、甲乙間で締結した○○年○○月○○日付「○○○○契約」(以下、「原契約」という。)に関して、解除することに合意し、以下のとおり合意書(以下、「本合意書」という。)を締結する。
又、原契約を全部解除するのではなく、原契約の一部のみを解除する場合は、解除の対象となるのは原契約のどの部分であるのかを特定するようにします。そのうえで、原契約を維持する条項を記載します。
第○○条(原契約維持)
甲及び乙は、本合意書に記載なき事項は、原契約の定めるところによることを確認する。
お互い何も返還するものがない場合、簡易な例ですが、
第○○条(放棄条項)
甲及び乙は、相手方に対するその余の請求をそれぞれ放棄する。
上記の原状回復の内容とも関係しますが、契約解除によって返還すべきものの返還が済んだ後あるいは、そもそも返還すべきものが無い場合など、お互い債権債務はありません(相手方に何か請求する権利も、相手から請求を受ける義務もありません)ということを確認する清算条項です。標準的な例として、
第○○条(清算条項)
甲及び乙は、相手方に対するその余の請求をそれぞれ放棄し、本合意書に定めるほか、何らの債権債務が無いことを相互に確認する。
上記の内容以外にも、解除の対象となる原契約の内容によっては、契約終了後も引き続きその効力を維持するような、いわゆる残存条項が定められていることもあります。その場合は、「解除後の効力はどうするのか?」又、原契約に契約の解除ができる条件等が記載されており、「そもそも解除ができるのか?」ということもありますが、そういったことも含めて検討済みとして、あくまでも、契約当事者同士が話し合って「無かったことにしましょう」という合意を前提として合意書を作成します。当事者全員が合意(納得)すれば、締結済み契約を解除する新たな契約を締結したことになり、契約自由(私的自治の原則)によって認められています。
○○○○(以下、「甲」という。)と○○○〇(以下、「乙」という。)は、甲乙間で締結した○○年○○月○○日付「△△△△契約」(以下、「原契約」という。)に関して、以下のとおり合意したので、合意書(以下、「本合意書」という。)を締結する。
第1条
甲及び乙は、□□年□□月□□日(以下、「解除日」という。)をもって原契約を合意解除することとし、解除日以降、原契約はその効力を失うことを相互に確認する。
第2条
甲及び乙は、相手方に対するその余の請求をそれぞれ放棄し、本合意書に定めるほか、何らの債権債務がないことを確認する。
以上、本合意書締結の証として、本合意書2通を作成のうえ、甲乙相互に署名又は記名,押印のうえ、各1通を保管するものとする。
○○年○○月○○日
甲 印
乙 印
○○○○(以下、「甲」という。)と○○○〇(以下、「乙」という。)は、甲乙間で締結した○○年○○月○○日付「△△△△契約」(以下、「原契約」という。)に関して、以下のとおり合意したので、合意書(以下、「本合意書」という。)を締結する。
第1条
甲及び乙は、□□年□□月□□日(以下、「解除日」という。)をもって原契約を合意解除することとし、解除日以降、原契約はその効力を失うことを相互に確認する。
第2条
甲は原契約の解除に伴い、受領済の代金○○円を乙に返還し、乙はこれを受領した。
第3条
甲及び乙は、相手方に対するその余の請求をそれぞれ放棄し、本合意書に定めるほか、何らの債権債務がないことを確認する。
以上、本合意書締結の証として、本合意書2通を作成のうえ、甲乙相互に署名又は記名,押印のうえ、各1通を保管するものとする。
○○年○○月○○日
甲 印
乙 印
上記は、原契約として売買契約を想定した例ですが、前文で解除する原契約を特定し、第1条で解除する日付を規定しています。又、原状回復として第2条で受領済金銭の返還を規定し、第3条で清算条項を規定しています。売買契約の目的物が引渡し済であれば、受領済目的物を返還する必要があります。例えば、以下のような条項を追記します。
第○○条
乙は○○年○○月○○日、本件受領物を甲に返還するものとする。
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甲南大学理学部卒業 応用数学を学びSEとしてIT関連企業に勤務。2017年行政書士事務所を開業、現在に至る。
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