金銭消費貸借に関する作成例
以下の金銭消費貸借契約書を原契約として、利息の変更,返済方法の変更,支払期限の変更などに関する合意書・覚書の例
<原契約例>
金銭消費貸借契約書
貸主〇〇〇〇(以下「甲」という。)と借主○○○○(以下「乙」という。)は、以下のとおり金銭消費貸借契約を締結した。
第一条 甲は乙に対し、本日、金○○円を貸付け、乙はこの金額を受領した。
第二条 乙は甲に対し、前条の借入金○○円を平成○○年○○月○○日までに甲に持参または、甲指定の銀行口座に振り込む方法で返済する。
ただし、振込手数料は乙の負担とする。
第三条 乙が前条の返済を怠ったときは、甲より何らの催告なくして、当然に期限の利益を失い、直ちに借入金全額を返済しなければならない。
本契約締結の証として、本契約書二通を作成し、甲乙相互に署名・押印のうえ各一通を保管することとする。
平成 年 月 日
甲 印
乙 印
利息の変更例
原契約締結時は利息を発生しないものとしていたが、これを発生するものとする変更の場合、その旨を明確にすることと、いつから利息を発生させるのかを明確にします。
<記載例>
覚 書
貸主○○○○(以下「甲」という。)と借主○○○○(以下「乙」という。)は、甲乙間の平成○○年○○月○○日付け金銭消費貸借契約(以下「原契約」という。)に関して、次の理由により、以下の通り覚書(以下「本覚書」という。)を締結する。
「理由」
原契約で定めていた利息を変更することとした。
第一条(利息の変更)
甲および、乙は、本覚書締結以降、原契約における利息を以下のとおり変更する。
(変更前) 利息 ゼロ
(変更後) 利息 年○○パーセント
第二条(原契約維持)
甲及び乙は、本覚書に記載なき事項は、原契約に定めるところによることを確認する。
本覚書締結の証として、本覚書二通を作成し、甲乙相互に署名・押印のうえ各一通を保管することとする。
平成 年 月 日
甲 印
乙 印
返済方法の変更例
原契約では持参または、振り込みによる一括返済としていたが、振込による分割払に変更する場合の例。分割払いにする場合は、期限の利益の喪失条項についても見直しが必要となります。
<記載例>
覚 書
貸主○○○○(以下「甲」という。)と借主○○○○(以下「乙」という。)は、甲乙間の平成○○年○○月○○日付け金銭消費貸借契約(以下「原契約」という。)に関して、次の理由により、以下の通り覚書(以下「本覚書」という。)を締結する。
「理由」
甲に対して乙が原契約で定めていた一括払いによる支払い方法を分割払いに変更することとなった。
第一条(利息の変更)
甲および、乙は、原契約における支払方法を以下のとおり変更する。
(変更前) 乙は甲に対し、借入金○○円を平成○○年○○月○○日までに甲に持参または、甲指定の銀行口座に振り込む方法で返済する。ただし、振込手数料は乙の負担とする。
(変更後) 乙は甲に対し、借入金○○円を以下のとおり分割して、甲指定の銀行口座に振り込む方法で支払う。ただし、振込手数料は乙の負担とする。
(1) 平成○○年○○月○○日から平成○○年○○月○○日まで毎月末日限り、金○○円ずつ
(2) 平成○○年○○月○○日末日限り 金○○円
第二条(期限の利益の喪失)
乙が前条の金員の支払いを一回でも怠ったときは、乙は、当然に期限の利益を失い、甲に対して残金を一括で支払う。
第三条(原契約維持)
甲及び乙は、本覚書に記載なき事項は、原契約に定めるところによることを確認する。
本覚書締結の証として、本覚書二通を作成し、甲乙相互に署名・押印のうえ各一通を保管することとする。
平成 年 月 日
甲 印
乙 印
期限の利益の喪失条項の変更例
期限の利益の喪失事由として、分割金の支払いを怠ったときを記載する場合が多いですが、一回でも支払時期が遅れた場合や、二回以上遅れた場合、あるいは滞納金額が○○円に達した時といった滞納金額の要件をつけたりする場合もあります。
<記載例>
覚 書
貸主○○○○(以下「甲」という。)と借主○○○○(以下「乙」という。)は、甲乙間の平成○○年○○月○○日付け金銭消費貸借契約(以下「原契約」という。)に関して、次の理由により、以下の通り覚書(以下「本覚書」という。)を締結する。
「理由」
原契約で定めていた期限の利益の喪失条項を変更することになった。
第一条(期限の利益の喪失)
甲および乙は、原契約に定める期限の利益の喪失条項を以下のとおり変更する。
(変更前) 乙が第○○条の金員の支払いを一回でも怠ったときは、乙は、当然に期限の利益を失い、甲に対して残金を一括で支払う。
(変更後) 乙が第○○条の金員の支払いを二回以上怠ったときは、乙は、当然に期限の利益を失い、甲に対して残金を一括で支払う。
第二条(原契約維持)
甲及び乙は、本覚書に記載なき事項は、原契約に定めるところによることを確認する。
本覚書締結の証として、本覚書二通を作成し、甲乙相互に署名・押印のうえ各一通を保管することとする。
平成 年 月 日
甲 印
乙 印
債務不存在の確認に関する合意書,覚書
借りた金銭(金銭消費貸借契約)の支払い債務が弁済により消滅した場合、記載する内容としては、
・弁済によって原契約に基づいて発生した全ての債務の履行が完了したことを明確に
・合意書,覚書に定めるほか、何らの債権債務がないことを明確に
・当事者は貸主、借主 などです。
又、第三者の弁済により債務が消滅した場合は、その旨を明確に記載します。その他、相殺により債務が消滅した場合、貸主が放棄した場合等があります。
<記載例>
覚 書
貸主○○○○(以下「甲」という。)と借主○○○○(以下「乙」という。)は、甲乙間の平成○○年○○月○○日付け金銭消費貸借契約(以下「原契約」という。)に関して、次の理由により、以下の通り覚書(以下「本覚書」という。)を締結する。
「理由」
原契約に基づいて発生した乙の甲に対する債務の履行が全てなされたので、債務が存在しないことを確認する。
第一条(弁済による債務消滅)
甲および乙は、原契約に基づいて発生した全ての債務の履行を完了したことを確認する。
第二条(清算条項)
甲および乙は、相手方に対するその余の請求をそれぞれ放棄し、本覚書に定めるほか、何ら債権債務がないことを相互に確認する。
本覚書締結の証として、本覚書二通を作成し、甲乙相互に署名・押印のうえ各一通を保管することとする。
平成 年 月 日
甲 印
乙 印
第二条の清算条項について「本覚書に関して、何ら債権債務がない・・・」と記載すると、本覚書以外の債権債務は残っていると解釈できます。本覚書以外にも借入金の債権債務が存在するのであれば、それでも良いですが、そうでなければ「その余の請求をそれぞれ放棄し、本覚書に定めるほか、何ら債権債務がない・・・」と記載します。「本覚書に関して、何ら債権債務がない・・・」と記載するのは、その他の権利関係が存続している場合、その権利関係に影響を及ぼさないようにするために記載します。
<第三者の弁済により債務の消滅例>
(弁済による債務消滅)
甲および乙は、乙の親である○○○○(以下「丙」という。)の弁済により、原契約に基づいて発生した乙の甲に対する全ての債務の履行を完了したことを確認する。
<相殺による債務の消滅例>
第一条(相殺による債務消滅)
1 甲および乙は、本日現在乙が甲に対して原契約に基づき金○○円の借入金債務を負担していること、甲が乙に対して○○年○○月○○日付け金銭消費貸借契約に基づき金○○円の借入金債務を負担していることをそれぞれ確認し、乙の借入金債務と甲の借入金債務とを対等額で相殺する。
2 甲および乙は、前項の相殺により、原契約に基づいて発生した乙の甲に対する全ての債務の履行を完了したことを確認する。
<貸主の放棄による債務の消滅例>
第一条(放棄による債務消滅)
甲は、原契約に基づいて発生した甲の乙に対する全ての債権を放棄する。
公正証書の作成に関する合意書,覚書
金銭消費貸借契約書を公正証書にし、その契約書に約定どおりに履行されない場合には直ちに強制執行されても異議は唱えないとの文言が記載されていれば、裁判を経ることなく借主の財産に対して強制執行をして貸金の回収を図ることができます。このような執行認諾文言付公正証書を作成することに合意した場合、それを書面として残す場合があります。記載内容としては、
・原契約に基づいて発生する債務の履行について、強制執行されても異議は唱えない旨を記載した公正証書を作成することに合意したことを明確に
・本合意事項以外は原契約に定めるところによることを明記
・当事者は貸主、借主 などです。
又、公正証書を作成する公証役場の場所や作成する日時を明記する場合や、原案の作成者、作成手数料の負担者を明記する場合もあります。
<記載例>
覚 書
貸主○○○○(以下「甲」という。)と借主○○○○(以下「乙」という。)は、甲乙間の平成○○年○○月○○日付け金銭消費貸借契約(以下「原契約」という。)に関して、次の理由により、以下の通り覚書(以下「本覚書」という。)を締結する。
「理由」
原契約について公正証書を作成する旨の取決めをする。
第一条(公正証書の作成)
甲および乙は、原契約について、原契約に基づいて発生する債務の履行につき、直ちに強制執行に服する旨の陳述(強制執行認諾文言)を記載した公正証書を作成することに合意し、そのために必要な手続きを行う。
第三条(原契約維持)
甲及び乙は、本覚書に記載なき事項は、原契約に定めるところによることを確認する。
本覚書締結の証として、本覚書二通を作成し、甲乙相互に署名・押印のうえ各一通を保管することとする。
平成 年 月 日
甲 印
乙 印
<公正証書作成費用の負担者を定める例>
以下のような条項を追加します。
第〇〇条(作成費用の負担)
公正証書の作成に必要な手数料等の費用は、乙が負担するものとする。
あるいは
第〇〇条(作成費用の負担)
公正証書の作成に必要な手数料等の費用は、甲乙相等しい割合で負担する。
<公正証書作成する公証役場を定める例>
以下のような条項にします。
第一条(公正証書の作成)
甲および乙は、原契約について、原契約に基づいて発生する債務の履行につき、直ちに強制執行に服する旨の陳述(強制執行認諾文言)を記載した公正証書を○○公証役場で作成することに合意し、そのために必要な手続きを行う。
あるいは
第一条(公正証書の作成)
甲および乙は、原契約について、原契約に基づいて発生する債務の履行につき、直ちに強制執行に服する旨の陳述(強制執行認諾文言)を記載した公正証書を甲指定の公証役場で作成することに合意し、そのために必要な手続きを行う。