合意書や覚書の具体的な作成例

金銭消費貸借,業務委託,業務請負など合意書,覚書の具体的な作成例|神戸 行政書士オフィス辻下

建物賃貸借,金銭消費貸借,業務委託,業務請負に関するものなど、合意書や覚書の記載内容の具体的例や作成のポイント

日々の暮らしで役立つ法律文書合意書や覚書の具体的な作成例

個人間で約束を交わしたとき、契約書の内容を変更するとき、金銭の返済方法を変更するときなど、当事者間で決めた内容を書面に残しておきたい場面があります。そのような場合に利用される書類が「合意書」や「覚書」です。

合意書や覚書には、法律で一律に定められた書式があるわけではありません。作成する目的や合意した内容に応じて、必要な事項を記載することが大切です。このページでは、個人間の約束、金銭貸借、建物賃貸借、業務委託・請負契約などについて、合意書・覚書の具体的な作成例と記載時のポイントを紹介します。記載例を参考にする際には、当事者の関係、原契約の内容、実際の合意事項に合わせて条項を調整する必要があります。

合意書・覚書の具体的な作成例一覧

ここでは、次のような場面で使用する合意書・覚書の作成例を紹介します。

・ 合意書・覚書を作成するときの注意点

・ 契約内容を変更する覚書に共通する記載事項

・ 合意書・覚書の作成でよくある質問

・ 行政書士による合意書・覚書の作成サポート

各作成例について、書面を作成する場面、具体的な文例、記載するときの注意点を順番に説明します。なお、合意書と覚書の違いや基本的な書き方については、次の関連記事も参考にしてください。

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個人間の約束に関する合意書の作成例

個人間で約束した内容を確認する合意書

友人、知人、親族などの個人間では、日常生活の中でさまざまな約束を交わすことがあります。例えば、知人のために一時的に費用を立て替えた場合、後日、その費用を誰が、いつまでに、どのような方法で負担するのかを取り決めることがあります。

このような場合、口頭だけの約束では、金額や支払期限について後から認識が異なる可能性があります。そこで、当事者双方が合意した内容を明確にし、将来の認識違いを防ぐために合意書を作成する方法があります。

例えば、甲が乙の依頼によって引越費用の一部を立て替えて支払い、乙が後日その費用を甲に返還することを約束した場合です。

【具体例:知人のために立て替えた費用の支払いに関する合意書】

合意書

甲○○○○(以下「甲」という。)と乙○○○○(以下「乙」という。)は、甲が乙のために立て替えた費用の支払いについて、次のとおり合意する。

第1条(立替費用の確認)

甲及び乙は、乙の依頼により、甲が20XX年○月○日に乙の引越費用の一部として金80,000円を立て替えて支払ったこと、及び乙が甲に対して同額の立替金返還債務を負担していることを確認する。

第2条(立替費用の支払い)

乙は甲に対し、前条の立替金80,000円を、20XX年○月○日限り、甲が指定する銀行口座に振り込む方法により支払う。

2.振込手数料は乙の負担とする。

第3条(支払完了の確認)

甲及び乙は、乙が第2条に定める立替金の全額を支払ったときは、第1条に定める立替金返還債務が消滅することを確認する。

第4条(協議事項)

本合意書に定めのない事項又は本合意書の解釈について疑義が生じた場合、甲及び乙は誠実に協議するものとする。

本合意成立の証として、本書2通を作成し、甲乙署名又は記名押印のうえ、各1通を保管する。

令和〇〇年○月○日

甲 住所

  氏名         印

乙 住所

  氏名         印



作成するときのポイント

この合意書では、次の事項を明確にしています。

  • 約束の原因:甲が乙のために引越費用を立て替えたこと
  • 支払う金額:立替金80,000円
  • 支払期限と方法:具体的な年月日と銀行振込
  • 支払完了後の取扱い:立替金返還債務が消滅すること

このように、個人間の合意書では、単に「お金を支払うことに合意した」と記載するのではなく、何のための支払いなのか、金額はいくらか、いつまでに支払うのかを明確にすることが重要です。また、既に立て替えた費用を確認する場合には、領収書や振込記録などによって、立替金額を確認できるようにしておくことが望まれます。なお、この作成例は、乙が甲に対して立替金の返還義務を負っていることについて、当事者間に争いがない場合を想定しています。

物品の返還に関する合意書

友人、知人、親族などの間で何らかの約束をした場合、口頭だけでは約束の内容や履行期限について認識が異なることがあります。例えば、相手に預けている物品を返還してもらうことや、一定の期日までに必要な手続を行うことなどについて、当事者双方で合意した内容を文書にする場合です。

合意書には、主に次の事項を記載します。

  • 誰と誰が合意したのか
  • 何について合意したのか
  • 誰が、何を、いつまでに行うのか
  • 履行の方法や費用負担
  • その他必要な事項
【作成例:物品の返還に関する合意書】

合意書

甲○○○○と乙○○○○は、乙が保管している甲所有の物品の返還について、次のとおり合意する。

第1条(物品の確認)

甲及び乙は、乙が現在保管している次の物品が甲の所有物であることを確認する。

物品名:○○○○

製造番号等:○○○○

数量:○個

第2条(物品の返還)

乙は甲に対し、前条の物品を20XX年○月○日までに、甲の指定する場所において返還する。

第3条(返還費用)

前条の返還に必要な運搬費用は、乙の負担とする。

第4条(協議事項)

本合意書に定めのない事項又は本合意書の解釈について疑義が生じた場合、甲及び乙は誠実に協議する。

本合意成立の証として、本書2通を作成し、甲乙署名又は記名押印のうえ、各1通を保管する。

令和〇〇年○月○日

甲 住所

  氏名         印

乙 住所

  氏名         印


作成するときのポイント

この例では、返還する物品、返還期限、返還場所、費用負担を明確にしています。特に、返還対象となる物品は、後から別の物品と混同しないよう、名称だけでなく、型番、製造番号、数量などによって特定することが重要です。

また、返還期限を「できるだけ早く」「都合のよいとき」などと記載すると、履行時期が不明確になります。具体的な年月日を定めるほか、必要に応じて返還場所や引渡方法も明記します。なお、物品の所有権自体に争いがある場合や、既に当事者間で紛争が生じている場合には、単純な返還合意書では対応できないことがあります。

金銭貸借に関する合意書・覚書の作成例

金銭消費貸借契約では、契約締結後に返済期限や返済方法を変更する場合があります。例えば、借主が当初の約束どおりに返済できなくなり、貸主と借主が話し合って返済条件を変更するケースです。

このような場合には、原契約を特定したうえで、変更する内容を明確に記載した覚書を作成することが考えられます。

借入金の返済期限を変更する覚書

当初の返済期限を延長する場合の作成例です。

【作成例】

覚書

貸主○○○○(以下「甲」という。)と借主○○○○(以下「乙」という。)は、甲乙間で令和〇〇年○月○日に締結した金銭消費貸借契約(以下「原契約」という。)について、次のとおり合意する。

第1条(返済期限の変更)

甲及び乙は、原契約第○条に定める借入金の返済期限を、次のとおり変更する。

変更前:令和〇〇年○月○日

変更後:令和〇〇年○月○日

第2条(原契約の維持)

本覚書によって変更する事項を除き、原契約の各条項は引き続き効力を有するものとする。

本覚書成立の証として、本書2通を作成し、甲乙署名又は記名押印のうえ、各1通を保管する。

令和〇〇年○月○日

甲(貸主) 住所

  氏名         印

乙(借主) 住所

  氏名         印


作成時のポイント

返済期限の変更では、変更前と変更後の年月日を明確に記載します。既に返済期限が経過している場合には、未払元金、利息、遅延損害金の有無と金額、従前の支払遅延についての取扱いなども確認する必要があります。単に返済期限を変更するだけで、既に発生した遅延損害金が当然に消滅するわけではありません。

また、連帯保証人がいる場合には、保証契約への影響についても別途確認する必要があります。

一括払いを分割払いに変更する覚書

当初は借入金を一括返済する予定であったものの、貸主と借主が合意して分割払いに変更する場合の例です。

【作成例】

覚書

貸主○○○○(以下「甲」という。)と借主○○○○(以下「乙」という。)は、20XX年○月○日付金銭消費貸借契約(以下「原契約」という。)に関し、次のとおり合意する。

第1条(残債務の確認)

乙は甲に対し、原契約に基づく借入金元金について、本日現在、金600,000円の未払債務があることを認め、甲及び乙はその金額を確認する。

第2条(返済方法の変更)

甲及び乙は、原契約第○条に定める返済方法を変更し、乙が前条の金員を次のとおり分割して支払うことに合意する。

1.令和〇〇年4月末日から同年9月末日まで、毎月末日限り金100,000円ずつ、合計6回

2.支払方法は、甲が指定する銀行口座への振込送金とする。

3.振込手数料は乙の負担とする。

第3条(期限の利益の喪失)

乙が前条に定める分割金の支払いを2回以上怠ったときは、乙は当然に期限の利益を失い、甲に対し、その時点における未払残額を直ちに支払う。

第4条(原契約の維持)

本覚書によって変更する事項を除き、原契約の各条項は引き続き効力を有する。ただし、原契約の規定と本覚書の規定が抵触する場合には、本覚書の規定を優先する。

本覚書成立の証として、本書2通を作成し、甲乙署名又は記名押印のうえ、各1通を保管する。

令和〇〇年○月○日

甲(貸主) 住所

  氏名         印

乙(借主) 住所

  氏名         印


作成時のポイント

分割払いに変更する場合には、分割回数、各回の支払金額、支払期限、支払方法を明確にする必要があります。上記の例では、60万円を毎月10万円ずつ6回に分けて返済する内容としています。

実際の作成では、端数が生じる場合の最終回の支払金額や、利息・遅延損害金をどのように取り扱うかも整理します。また、分割払いが履行されなかった場合に残額を一括請求するため、期限の利益喪失条項を設けることがあります。

ただし、期限の利益喪失事由は、一度の支払遅延とするのか、複数回の遅延とするのかなど、当事者の合意内容に応じて定めます。なお、この例は分割返済に関する基本的な記載例です。既に発生している利息・遅延損害金の処理、保証人の有無、時効その他の事情によって、追加条項が必要になることがあります。

借入金の利息を変更する覚書

金銭消費貸借契約の締結後に、無利息の貸付けを利息付きに変更する場合や、既存の利率を変更する場合があります。

【条項例】

第1条(利息の変更)

甲及び乙は、原契約に定める借入金の利息について、次のとおり変更することに合意する。

変更前:無利息

変更後:令和〇〇年○月○日以降の未払元金に対し、年○%の割合による利息を付する。

2.前項の利息は、毎年○月○日及び借入金の最終返済日に支払うものとする。


作成時のポイント

利息を変更する場合には、利率だけでなく、いつから変更後の利率を適用するのかを明確にします。また、利息の計算方法、支払時期、元金の一部返済があった場合の取扱いも確認する必要があります。利率については利息制限法などの適用関係にも注意が必要です。

期限の利益喪失条項を変更する覚書

分割払いの契約では、支払いが遅れた場合に、残額を一括請求できる条件を定めることがあります。この条件を変更する場合の条項例です。

【条項例】

第1条(期限の利益喪失条項の変更)

甲及び乙は、原契約第○条の期限の利益喪失条項を、次のとおり変更する。

変更前:

「乙が分割金の支払いを1回でも怠ったときは、乙は当然に期限の利益を失い、未払残額を直ちに支払う。」

変更後:

「乙が分割金の支払いを2回以上怠ったときは、乙は当然に期限の利益を失い、未払残額を直ちに支払う。」


作成時のポイント

期限の利益喪失条項は、支払遅延時の当事者の権利義務に影響する重要な条項です。「2回以上」とする場合にも、連続した2回に限定するのか、累計2回とするのかなど、解釈に疑義が生じないようにする必要があります。また、一定額以上の滞納が生じた場合を期限の利益喪失事由とする方法もあります。

借入金の返済完了を確認する合意書

借入金をすべて返済した場合、貸主と借主の間で、返済が完了したことを書面で確認することがあります。

【作成例】

債務弁済完了確認書

貸主○○○○(以下「甲」という。)と借主○○○○(以下「乙」という。)は、20XX年○月○日付金銭消費貸借契約(以下「原契約」という。)について、次のとおり確認する。

第1条(債務の弁済完了)

甲及び乙は、乙が原契約に基づいて甲に対して負担していた借入金元金、利息及び遅延損害金その他原契約に基づく金銭債務の全額について、20XX年○月○日までに弁済を完了したことを確認する。

第2条(債権債務の不存在)

甲及び乙は、原契約に関し、相互に何らの債権債務が存在しないことを確認する。

本確認の証として、本書2通を作成し、甲乙署名又は記名押印のうえ、各1通を保管する。

令和〇〇年○月○日

甲(貸主) 住所

  氏名         印

乙(借主) 住所

  氏名         印



作成時のポイント

この例では、債権債務が存在しないことを確認する対象を、特定の金銭消費貸借契約に限定しています。貸主と借主の間に別の貸借契約や取引関係がある場合には、それらまで清算の対象に含めないよう注意が必要です。

また、実際には全額の弁済が完了していない場合に、債権者が残額を放棄するのであれば、単なる弁済完了の確認とは異なる内容の書面が必要になります。

【相殺・債権放棄によって債務を消滅させる場合】

借入金の債務が消滅する原因には、弁済のほか、相殺や債権放棄などがあります。

【相殺に関する条項例】

第1条(相殺による債務消滅)

甲及び乙は、本日現在、乙が甲に対して金○○円の借入金債務を負担し、甲が乙に対して金○○円の金銭債務を負担していることを確認する。

2.甲及び乙は、前項の各債務について、対当額で相殺することに合意する。

3.甲及び乙は、前項の相殺後の各債務の残額が、それぞれ金○○円であることを確認する。


【債権放棄に関する条項例】

第1条(債権の放棄)

甲は乙に対し、令和〇〇年○月○日付金銭消費貸借契約に基づく貸金債権のうち、未払元金○○円及びこれに係る未払利息○○円の債権を放棄し、乙はこれを確認する。



作成時のポイント

相殺をする場合には、相殺する債権の内容、金額、弁済期、相殺後の残額などを確認する必要があります。債権放棄の場合には、放棄する債権の範囲を明確にします。なお、相殺や債権放棄については、民法上の要件や税務上の取扱いも関係することがあるため、実際の事情に応じた確認が必要です。

公正証書の作成に関する覚書

金銭の貸借について、後日、公正証書を作成することを当事者間で取り決める場合があります。

【作成例】

覚書

貸主○○○○(以下「甲」という。)と借主○○○○(以下「乙」という。)は、20XX年○月○日付金銭消費貸借契約(以下「原契約」という。)に関し、次のとおり合意する。

第1条(公正証書の作成)

甲及び乙は、原契約に基づく乙の金銭債務について、乙が強制執行に服する旨の陳述を記載した公正証書を作成するため、必要な手続に協力することに合意する。

第2条(作成費用)

前条の公正証書作成に必要な公証人手数料その他の費用は、甲及び乙が各2分の1ずつ負担する。

第3条(原契約の維持)

本覚書に定める事項を除き、原契約の各条項は引き続き効力を有するものとする。

本覚書成立の証として、本書2通を作成し、甲乙署名又は記名押印のうえ、各1通を保管する。

令和〇〇年○月○日

甲(貸主) 住所

  氏名         印

乙(借主) 住所

  氏名         印



作成時のポイント

この覚書は、将来、公正証書を作成することについて合意した内容を記録するものです。覚書を作成しただけで、直ちに強制執行ができるようになるわけではありません。一定額の金銭の支払などについて、法定の要件を満たす強制執行認諾文言付き公正証書が作成された場合には、裁判で判決を取得することなく強制執行の手続を進められる場合があります。

ただし、実際の強制執行には、執行文の付与や送達など、事案に応じて必要な手続があります。公正証書を作成する場合には、公証役場で必要書類や具体的な作成手続を確認します。

建物賃貸借に関する合意書・覚書の作成例

建物賃貸借契約では、賃料の滞納、支払条件の変更、賃貸人の変更などについて、合意書や覚書を作成する場合があります。

滞納家賃の支払いに関する覚書

借主が家賃を滞納した場合、滞納金額を確認し、支払期限や支払方法を取り決めるために覚書を作成することがあります。

【作成例】

覚書

賃貸人○○○○(以下「甲」という。)と賃借人○○○○(以下「乙」という。)は、20XX年○月○日付建物賃貸借契約(以下「原契約」という。)に基づく未払賃料について、次のとおり合意する。

第1条(滞納賃料の確認)

乙は甲に対し、原契約に基づく20XX年○月分から同年○月分までの未払賃料が、合計金○○円であることを認める。

第2条(滞納賃料の支払い)

乙は甲に対し、前条の未払賃料全額を、20XX年○月○日限り、甲の指定する銀行口座に振り込む方法で支払う。

2.振込手数料は乙の負担とする。

第3条(原契約の維持)

本覚書に定める事項を除き、原契約の各条項は引き続き効力を有するものとする。

本覚書成立の証として、本書2通を作成し、甲乙署名又は記名押印のうえ、各1通を保管する。

令和〇〇年○月○日

甲(賃貸人) 住所

  氏名         印

乙(賃借人) 住所

  氏名         印



作成時のポイント

滞納家賃に関する覚書では、滞納している期間と金額を明確にすることが重要です。特に、賃料以外に共益費、管理費、遅延損害金などの未払金がある場合には、それぞれの金額を区別して記載することが考えられます。また、既に賃貸借契約が解除されている場合と、契約を継続しながら滞納分の支払いを取り決める場合とでは、必要な条項が異なります。

滞納家賃を分割払いにする場合

滞納家賃を一括して支払うことが難しい場合には、賃貸人と賃借人が合意して分割払いにすることがあります。この場合、前記の覚書の第2条を、例えば次のように変更します。

【条項例】

第2条(滞納賃料の分割払い)

乙は甲に対し、第1条の未払賃料合計金○○円を、次のとおり分割して支払う。

1.令和〇〇年○月末日から20XX年○月末日まで、毎月末日限り金○○円ずつ

2.最終回の支払期限である20XX年○月末日限り、残額金○○円

3.支払方法は甲の指定する銀行口座への振込送金とし、振込手数料は乙の負担とする。


【期限の利益喪失条項の例】

第3条(期限の利益の喪失)

乙が前条に定める分割金の支払いを2回以上怠ったときは、乙は当然に期限の利益を失い、甲に対し、未払残額を直ちに支払う。



作成時のポイント

分割払いにする場合には、通常の毎月の家賃と、過去の滞納家賃の分割金とを区別して記載します。また、滞納家賃の分割払いを認めることと、賃貸借契約の解除の可否は別の問題です。

賃料の不払いがあったからといって、常に直ちに賃貸借契約を解除できるとは限りません。解除の可否は、契約内容や不払いの状況、信頼関係の破壊の有無などを踏まえて判断されます。そのため、分割払いに関する覚書へ契約解除に関する条項を設ける場合には、慎重な検討が必要です。

賃貸人の変更に関する確認書・覚書

建物の所有者が変更された場合などには、賃貸人の地位が別の者へ移転することがあります。この場合、新旧賃貸人や賃借人の間で、賃貸人の変更に関する事項を確認する書面を作成することがあります。

【条項例】

第1条(賃貸人の地位の移転確認)

甲(旧賃貸人)、乙(新賃貸人)及び丙(賃借人)は、20XX年○月○日付建物賃貸借契約(以下「原契約」という。)について、20XX年○月○日付の対象建物の所有権移転に伴い、原契約における賃貸人の地位が甲から乙に移転したことを確認する。

第2条(敷金の承継)

甲、乙及び丙は、原契約に基づく敷金返還債務について、乙が承継することを確認する。

第3条(賃料の支払先)

丙は、20XX年○月分以降の賃料を、乙の指定する銀行口座に支払うものとする。

第4条(原契約の維持)

原契約の内容は、賃貸人の変更及び本書で確認した事項を除き、従前のとおりとする。



作成時のポイント

賃貸人の変更については、所有権の移転に伴い法律上賃貸人の地位が移転する場合と、当事者の合意によって賃貸人の地位を移転する場合があります。そのため、すべての場合に賃借人を含む三者の合意が必要になるわけではありません。

また、敷金返還債務の承継、未払賃料の帰属、賃料の支払先、賃貸人の地位の留保などについても、事案に応じた確認が必要です。この記載例は、賃貸人の地位が既に移転していることを関係者間で確認する場合の一例です。

業務委託・請負契約に関する覚書の作成例

業務委託契約や請負契約では、契約締結後に業務内容、仕様、納期、報酬などを変更することがあります。そのような場合、原契約を変更するための覚書を作成します。

業務内容・仕様を変更する覚書

当初の契約で定めていた業務内容や仕様を変更する場合の例です。

【作成例】

覚書

委託者○○○○(以下「甲」という。)と受託者○○○○(以下「乙」という。)は、20XX年○月○日付業務委託契約(以下「原契約」という。)について、次のとおり合意する。

第1条(業務仕様の変更)

甲及び乙は、原契約に定める業務仕様を、次のとおり変更する。

変更前:原契約別紙仕様書に記載された内容

変更後:本覚書に添付する別紙変更仕様書に記載された内容

2.前項の変更は、令和〇〇年○月○日から適用する。

第2条(納期の変更)

甲及び乙は、前条の仕様変更に伴い、原契約に定める納期を次のとおり変更する。

変更前:令和〇〇年○月○日

変更後:令和〇〇年○月○日

第3条(委託料の変更)

甲及び乙は、前条までの変更に伴い、原契約に定める委託料を次のとおり変更する。

変更前:金○○円(税込)

変更後:金○○円(税込)

第4条(原契約の維持)

本覚書によって変更する事項を除き、原契約の各条項は引き続き効力を有するものとする。

本覚書成立の証として、本書2通を作成し、甲乙署名又は記名押印のうえ、各1通を保管する。

令和〇〇年○月○日

甲(委託者) 住所

  氏名         印

乙(受託者) 住所

  氏名         印



作成時のポイント

業務内容や仕様を変更する場合には、変更前と変更後の内容を比較できるようにすることが重要です。仕様書を添付している契約では、変更仕様書を覚書に添付する方法が考えられます。

また、仕様変更によって納期や委託料が変わる場合には、それらも同時に変更する必要があります。業務の性質によっては、成果物の検収、著作権その他の知的財産権、再委託、保守対応などへの影響も確認します。

納期だけを変更する場合

業務内容や報酬を変更せず、納期だけを延長する場合には、次のような条項を設けることがあります。

【条項例】

第1条(納期の変更)

甲及び乙は、原契約第○条に定める成果物の納期を、次のとおり変更する。

変更前:令和〇〇年○月○日

変更後:令和〇〇年○月○日

2.前項の変更によって、原契約に定める委託料は変更しないものとする。



作成時のポイント

納期変更の場合には、単に日付を変更するだけでなく、納期の変更理由や、遅延に伴う損害賠償・違約金などの取扱いを確認する必要があります。既に納期を経過している場合には、従前の遅延について責任を免除するのかどうかも、必要に応じて明確にします。

契約金額を変更する覚書

契約締結後に業務内容が増加した場合などには、契約金額を変更することがあります。


【条項例】



第1条(契約金額の変更)

甲及び乙は、原契約第○条に定める契約金額を、次のとおり変更する。

変更前:金○○円(税込)

変更後:金○○円(税込)

2.変更後の契約金額の支払時期及び支払方法については、原契約第○条の定めによる。



作成時のポイント

契約金額の変更では、変更後の総額を定める方法と、原契約の金額に追加報酬を加算する方法があります。いずれの場合も、消費税の取扱い、支払時期、請求書の発行、既払金との関係を明確にすることが重要です。

仕様変更に伴う追加費用を取り決める場合

仕様変更によって追加費用が発生する場合には、その金額や負担者を明確にします。

【追加費用を支払う場合の条項例】

第○条(追加費用)

甲は乙に対し、本覚書による仕様変更に伴う追加委託料として、金○○円(税込)を、令和〇〇年○月○日限り、乙の指定する銀行口座に振り込む方法で支払う。


【追加費用を請求しない場合の条項例】

第○条(追加費用の不請求)

乙は甲に対し、本覚書に定める仕様変更に伴う追加費用を請求しないものとする。



作成時のポイント

追加費用を請求しない場合には、どの変更業務に関する費用を対象とするのかを明確にすることが大切です。対象を曖昧にすると、その後さらに追加業務が発生した場合にも、追加費用を請求できないのかという問題が生じることがあります。

契約内容を変更する覚書に共通する記載事項

これまで紹介したように、覚書は既存の契約内容を変更するために利用されることがあります。その場合、特に重要となるのが次の事項です。

変更する原契約を明確にする

契約内容を変更する場合には、どの契約を変更するのかを特定する必要があります。例えば、次のように記載します。

【条項例】

「甲及び乙は、20XX年○月○日付業務委託契約書(以下『原契約』という。)について、次のとおり合意する。」


当事者間で複数の契約を締結している場合には、契約日だけでなく、契約名、対象業務、対象物件なども記載して特定します。

変更前と変更後を明確にする

契約内容を変更する覚書では、変更前と変更後の内容を併記すると、変更箇所を確認しやすくなります。例えば、契約期間を変更する場合には、次のように記載します。

【条項例】

第1条(契約期間の変更)

甲及び乙は、原契約第○条に定める契約期間を、次のとおり変更する。

変更前:令和〇〇年4月1日から20XX年9月30日まで

変更後:令和〇〇年4月1日から20XX年12月31日まで


なお、変更前と変更後を必ず併記しなければならないというわけではありません。原契約の特定の条項を全文差し替える方法や、変更内容のみを記載する方法もあります。

変更内容の適用開始日を明確にする

覚書を締結した日と、変更内容を適用する日が異なる場合があります。その場合には、変更内容の適用開始日を明確にすることが重要です。

【条項例】

「本覚書による変更は、20XX年○月○日から適用する。」


過去の日付から変更内容を適用する場合には、既に発生している権利義務や第三者との関係への影響も確認する必要があります。

変更しない条項の取扱いを定める

契約の一部だけを変更する場合には、それ以外の条項が引き続き適用されることを明確にします。

【条項例】

第○条(原契約の維持)

本覚書によって変更する事項を除き、原契約の各条項は引き続き効力を有するものとする。

2.原契約の規定と本覚書の規定が抵触する場合には、本覚書の規定を優先する。


ただし、覚書の内容によっては、この条項だけでは原契約との矛盾を解消できない場合があります。そのため、変更内容と原契約の関連条項を確認したうえで作成する必要があります。

合意書・覚書を作成するときの注意点

合意書や覚書は、単に約束した内容を書面にすればよいというものではありません。後から内容について争いが生じないようにするためには、次の点を確認することが大切です。

当事者を正確に記載する

誰と誰が合意したのかを明確にします。個人の場合には氏名や住所、法人の場合には法人名、所在地、代表者などを記載します。法人の担当者が署名する場合には、契約締結権限の有無についても確認が必要です。

合意した内容を具体的に記載する

「誠実に対応する」「速やかに支払う」「必要に応じて協議する」などの表現だけでは、具体的な義務の内容が不明確になることがあります。支払義務を定めるのであれば、金額、支払期限、支払方法などを記載します。物品の返還義務であれば、返還対象、期限、場所、方法を明確にします。

原契約との矛盾を確認する

既存の契約内容を変更する場合には、原契約の他の条項との関係を確認します。例えば、返済方法を変更する場合には、返済期限だけでなく、期限の利益喪失条項や遅延損害金に関する条項も確認する必要があります。また、業務委託契約で仕様を変更する場合には、納期、報酬、検収条件などにも影響することがあります。

清算条項の範囲を明確にする

合意書には、当事者間の債権債務が存在しないことを確認する「清算条項」を設ける場合があります。ただし、清算条項の対象を広く定めると、当事者が残しておきたい別の債権債務に影響するおそれがあります。そのため、特定の契約に関する債権債務だけを清算するのか、当事者間のすべての債権債務を清算するのかを明確にすることが重要です。

署名・押印と書面の保管

合意書や覚書は、一般に、書面への署名・押印がなければ常に無効になるというものではありません。ただし、当事者が合意したことや書面の成立を後から確認できるようにするため、署名又は記名押印を行い、各当事者が書面を保管する方法が考えられます。

また、電子契約を利用する場合には、電子署名や本人確認、データの保存方法などにも注意が必要です。なお、法律上、特定の方式が必要とされる契約については、その方式を満たす必要があります。

合意書・覚書の作成でよくある質問

Q1.合意書や覚書は自分で作成しても有効ですか?

合意書や覚書は、原則として当事者自身で作成できます。法律上必要な要件を満たし、合意内容が有効に成立していれば、専門家が作成していないことだけを理由に無効になるものではありません。ただし、内容が曖昧であったり、法律に違反する条項が含まれていたりする場合には、期待した効力が認められないことがあります。

Q2.以前に作成した契約書の内容を覚書で変更できますか?

当事者が合意すれば、既存の契約内容を覚書によって変更できる場合があります。その際には、変更する原契約、変更対象となる条項、変更後の内容、適用開始日などを明確にします。ただし、法令上の方式が要求される場合や、第三者の権利に影響する場合などには、別途確認が必要です。

Q3.覚書には変更前と変更後の両方を書く必要がありますか?

必ずしも両方を記載する必要はありません。変更後の内容だけを記載する方法や、原契約の特定の条項を全文差し替える方法もあります。ただし、変更前と変更後を併記することで、どの部分が変更されたのかを明確にしやすくなります。

Q4.合意書や覚書には必ず署名・押印が必要ですか?

合意書や覚書のすべてについて、法律上、署名・押印が必須とされているわけではありません。しかし、当事者が書面の内容を確認し、合意したことを示すために、署名又は記名押印を行うことが一般的です。契約の種類によっては特別な方式が必要となる場合もあります。

Q5.契約書がない場合でも合意書を作成できますか?

契約書を作成していない場合でも、当事者間で合意した内容を新たに書面にすることは可能です。例えば、口頭で約束した金銭の返済条件や、物品の返還方法などを合意書として残す場合です。ただし、過去の合意内容について当事者間の認識が異なる場合には、書面に記載する内容を慎重に確認する必要があります。

Q6.相手が約束を守らなかった場合、合意書があれば請求できますか?

合意書に具体的な義務が定められている場合、その義務の履行を求める根拠となることがあります。また、合意書は、当事者間でどのような合意が成立したかを示す証拠となり得ます。ただし、合意書があるだけで当然に強制執行ができるわけではありません。相手方が任意に履行しない場合には、債務名義の取得など、法的手続が必要になることがあります。

Q7.合意書と念書はどちらを作成すればよいですか?

当事者双方が約束する事項を明確にする場合には、合意書や覚書を作成する方法が考えられます。一方、一方の当事者が特定の事項を約束したり、事実を確認したりする場合には、念書という名称の書面が用いられることがあります。ただし、書面の法的性質や効力は、名称だけではなく、その内容や作成経緯などによって判断されます。

詳しくは「念書の書き方と法的効力」「念書の具体的な作成例」の関連記事も参考にしてください。

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行政書士による合意書・覚書の作成サポート

合意した内容を、曖昧さの少ない書面として残すために。当オフィスでは、個人間の約束や契約内容の変更などに関する合意書・覚書の文案作成をサポートしています。合意書や覚書は、ひな形を参考にして作成することもできますが、実際に必要となる条項は、合意する内容や当事者の事情によって異なります。

例えば、金銭の返済方法を変更する場合でも、返済期限だけを変更すればよいとは限りません。未払金額、利息、遅延損害金、期限の利益喪失条項、保証人の有無など、関連する事項を確認する必要があります。当オフィスでは、当事者間で合意した内容を整理し、書面に記載すべき事項を検討したうえで、合意書・覚書の文案を作成します。

行政書士に作成を依頼する3つのメリット
1.合意した内容を具体的な条項として整理できる

当事者間で決めた内容を、誰が、何を、いつまでに行うのかという観点から整理し、書面として明確にします。

2.必要な条項の記載漏れや矛盾を防ぎやすくなる

支払期限、履行方法、費用負担、原契約との関係などを確認し、合意内容に応じた条項を検討します。

3.将来の認識違いやトラブルの予防につながる

口頭だけでは曖昧になりやすい約束を文書化することで、当事者間で合意内容を確認しやすくなります。

  • 個人間の約束を合意書として残したい
  • 金銭の返済期限や分割払いの条件を変更したい
  • 既存の契約書の一部を覚書で変更したい
  • 契約期間や契約金額の変更を書面にしたい
  • 借入金の返済完了を確認する書面を作成したい
  • 合意した内容をどのように書けばよいかわからない
  • ひな形を参考にしても、自分の事情に合った書面を作成できない

合意書・覚書の作成でお困りの場合は、当オフィスまでお問い合わせください。当事者間で合意済みの事項を確認し、行政書士が取り扱うことのできる範囲で、必要な書類の文案作成をサポートします。

※)当事者間の紛争についての代理交渉、法律事件に関する法律事務など、弁護士法その他の法令により行政書士が取り扱うことのできない業務は対象外です。



合意書や覚書は、書面の名称よりも、当事者が何について合意し、どのような権利義務を定めたのかが重要です。作成する目的に合わせて必要な事項を整理し、後から内容を確認できる書面として残しておくことが、将来の認識違いやトラブルの予防につながります。

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        大学で応用数学を学び、システムエンジニアとしてIT関連企業に勤務。2017年行政書士事務所を開業し現在に至る。
        申請取次行政書士    2級ファイナンシャルプランニング技能士