


念書を作成したいと思っても、「何を書けばよいのか」「どのような文章にすればよいのか」と迷うことがあります。念書には、法律上決められた統一的な書式はありません。しかし、約束した内容や確認したい事実を明確にするためには、必要な事項を具体的に記載することが重要です。
例えば、お金の返済を約束する念書と、特定の行為を繰り返さないことを約束する念書では、記載すべき内容が異なります。このページでは、金銭の返済、家族生活に関する約束、物品の返却、未払金の支払い、約束の履行、過去の事実確認などの場面について、具体的な念書の文例と作成時のポイントを紹介します。念書の法的効力や契約書・合意書との違いについては、関連記事「念書を書く場面とその効力や書き方」で詳しく解説しています。
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念書は、一般的に、一方の当事者が一定の事実を認めたり、特定の行為を約束したりする内容を記載し、相手方に差し入れる書面です。例えば、次のような場合に利用されます。
念書を作成するときは、次の事項を意識することが基本です。
念書を作成する人と、念書を差し入れる相手方を明確にします。
念書を作成する原因となった事実や、過去の約束について記載します。
事実を確認するだけなのか、今後の行為を約束するのかを明確にします。
期限や履行方法が必要な場合には、具体的に記載します。
作成日、作成者の住所・氏名などを記載します。
ただし、すべての念書に同じ項目を記載する必要があるわけではありません。事実を確認するだけの念書であれば、履行期限や履行方法を記載する必要がない場合もあります。以下では、それぞれの用途に応じた作成例を紹介します。
友人や知人からお金を借りたものの、約束した期限までに返済できなかった場合、借主が借入金の存在と返済の約束を確認するため、念書を作成することがあります。例えば、50万円を借りていた人が、返済期限を過ぎても返済できず、改めて2回に分けて返済することを約束する場合です。
念書
○○ ○○ 様
私は、令和○年○月○日、貴殿から金50万円を借り受け、同年○月○日までに返済する約束をしましたが、現在まで返済していないことを認めます。
私は、上記借入金50万円について、次のとおり返済することを約束します。
1.令和○年○月○日限り 金25万円
2.令和○年○月○日限り 金25万円
上記金員は、それぞれの支払期限までに、貴殿が指定する銀行口座へ振り込む方法により支払います。なお、振込手数料は私が負担します。
以上のとおり、借入金の存在を認め、返済を約束する証として、本念書を差し入れます。
令和○年○月○日
住所 ○○○○
氏名 ○○○○ 印
この文例では、次の事項を明確にしています。
いつ、誰から、いくら借りたのかを記載しています。単に「50万円を返済します」と記載するだけでは、何の支払いなのかが明確にならない場合があります。
借りた金額と、現在返済していない金額を明確にします。一部を返済している場合には、当初の借入金額と未返済残額を区別して記載することが重要です。
2回に分けて返済するため、それぞれの支払期限と金額を記載しています。「毎月少しずつ返済する」などの曖昧な表現は避け、具体的な金額と期限を明確にします。
銀行振込による返済を約束する内容としています。返済方法についても、現金払いなのか銀行振込なのかなどを明確にしておくと、後日の認識の違いを防ぎやすくなります。
この文例は、利息のない借入金50万円が全額未返済であることを前提としています。利息や遅延損害金が発生している場合には、その有無や金額、計算の根拠を確認する必要があります。また、従前の返済期限を変更する場合には、貸主との合意が必要になることがあります。
借主が一方的に新しい返済予定日を書いた念書を差し入れただけで、貸主が従前の期限に基づいて請求する権利を当然に失うわけではありません。返済期限の変更、分割払い、期限の利益の喪失、遅延損害金などについて双方で取り決める場合には、債務承認弁済契約書を作成する方法もあります。
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夫婦や家族の間で、過去の言動について問題が生じた場合、本人がその事実を認め、今後は同様の行為を繰り返さないことを約束するため、念書を作成することがあります。例えば、家族に対して暴言を発した人が、その事実を認め、今後は同様の発言をしないと約束する場合です。
念書
○○ ○○ 様
私は、令和○年○月○日、貴殿に対して「○○○○」という発言をした事実を認めます。
私は、上記の発言について反省するとともに、今後、貴殿に対して同様の暴言を繰り返さないことを約束します。
以上のとおり、事実を認め、今後の行為について約束する証として、本念書を差し入れます。
令和○年○月○日
住所 ○○○○
氏名 ○○○○ 印
この文例では、過去の事実を確認する部分と、今後の行為を約束する部分を分けて記載しています。
いつ、誰に対して、どのような言動があったのかを記載します。ただし、事実関係に争いがある場合には、本人が認めていない内容を念書に記載することは適切ではありません。
「迷惑をかけない」「家族を大切にする」といった抽象的な表現だけでは、具体的に何を禁止するのか分からない場合があります。問題となった行為を特定し、今後どのような行為をしないのかを明確にすることが重要です。
念書に違反した場合の対応について記載することも考えられます。ただし、「約束を破った場合は相手の要求にすべて従う」といった包括的な内容は、義務の範囲が不明確であり、法的な問題が生じる可能性があります。
また、離婚、別居、財産分与などについては、それぞれ法律上の要件や当事者間の合意が問題となります。念書に記載しただけで、当然に離婚が成立したり、財産分与の内容が確定したりするわけではありません。
家族間の約束であっても、念書に記載した内容がすべて法的な義務となるわけではありません。また、暴力や強迫などが関係する場合には、念書の作成だけで問題が解決するとは限りません。特に、安全確保や相手方との交渉、すでに生じている紛争への対応が必要な場合には、適切な相談機関や弁護士への相談を検討する必要があります。
知人から借りた物品を返却する場合、返却する物品や期限、方法を明確にするため、念書を作成することがあります。例えば、借りていたパソコンを返却する場合です。
念書
○○ ○○ 様
私は、貴殿から借り受け、現在保管している下記物品について、令和○年○月○日までに貴殿へ返却することを約束します。
記
1.物品名 ノートパソコン
2.メーカー・型番 ○○○○
3.製造番号 ○○○○
4.数量 1台
5.返却期限 令和○年○月○日
6.返却場所 ○○○○
7.返却方法 上記返却場所に持参して引き渡す方法
以上
令和○年○月○日
住所 ○○○○
氏名 ○○○○ 印
�@ 返却する物品を特定する
物品名だけでなく、型番、製造番号、数量などを記載します。同じ種類の物品が複数ある場合には、どの物品を返却するのかを特定することが重要です。
�A 返却期限を明確にする
「近日中に返却する」などの表現ではなく、具体的な年月日を記載します。
�B 返却方法を明確にする
持参して返却するのか、配送するのかなどを明確にします。配送する場合には、送料の負担や配送方法などについても検討します。
物品の返却については、返却期限だけでなく、返却時の状態が問題となる場合があります。例えば、借りた物品が破損している場合や、付属品が不足している場合です。必要に応じて、返却時の状態や付属品についても記載します。ただし、破損した場合の損害賠償義務などについては、念書を作成しただけで当然に内容が確定するわけではありません。
商品代金やサービス代金などについて、支払期限を過ぎても支払いが行われていない場合、支払義務の存在を確認するため、念書を作成することがあります。例えば、購入した物品の代金10万円が未払いとなっている場合です。
念書
○○ ○○ 様
私は、令和○年○月○日に貴殿から購入した○○の代金10万円について、現在まで支払いをしていないことを認めます。
私は、上記未払代金10万円を、令和○年○月○日までに、貴殿が指定する銀行口座へ振り込む方法により支払うことを約束します。なお、振込手数料は私が負担します。
以上のとおり、未払代金の存在を認め、支払いを約束する証として、本念書を差し入れます。
令和○年○月○日
住所 ○○○○
氏名 ○○○○ 印
�@ 未払金が発生した原因を記載する
商品代金、サービス代金など、何の支払いなのかを明確にします。
�A 未払金額を明確にする
すでに一部を支払っている場合には、残額を確認して記載します。
�B 支払期限と支払方法を記載する
支払期限を具体的に定め、銀行振込などの支払方法を明確にします。
借入金と未払代金は、金銭を支払う義務があるという点では共通していますが、その義務が発生した原因は異なります。そのため、未払代金について念書を作成する場合には、売買契約などの原因となる取引を明確にすることが重要です。また、支払期限を変更する場合には、相手方との合意関係も確認する必要があります。
口頭で約束した内容について、実行する行為や期限を明確にするため、念書を作成することがあります。例えば、他人の敷地内に一時的に置いていた自己所有の物品を撤去することを約束する場合です。
念書
○○ ○○ 様
私は、貴殿所有の土地(所在:○○○○)に、私が所有する○○を置いていることを認めます。
私は、上記物品を令和○年○月○日までに撤去し、同土地から搬出することを約束します。なお、上記物品の撤去及び搬出に必要な費用は、私が負担します。
令和○年○月○日
住所 ○○○○
氏名 ○○○○ 印
�@ 実行する行為を具体的に記載する
「きちんと片付けます」などの表現ではなく、何を撤去するのかを明確にします。
�A 実行する期限を明確にする
いつまでに撤去するのかを記載します。
�B 費用負担を明確にする
撤去や搬出に費用がかかる場合には、その負担について記載することも考えられます。
この文例は、物品の所有者が撤去することを約束する場合を想定しています。しかし、土地の使用権限や物品の所有権について争いがある場合には、念書だけで問題を解決できるとは限りません。また、撤去後の土地の原状回復や損害賠償などについて双方で取り決める必要がある場合には、合意書などの作成を検討することがあります。
念書は、今後の行為を約束する場合だけでなく、過去の事実を確認するためにも利用されます。例えば、一定の金銭を受領した事実を認める場合です。
念書
○○ ○○ 様
私は、令和○年○月○日、貴殿から金10万円を現金で受領したことを認めます。
なお、上記金員は、令和○年○月○日に貴殿との間で成立した○○の売買契約に基づく代金として受領したものです。
以上の事実を確認する証として、本念書を差し入れます。
令和○年○月○日
住所 ○○○○
氏名 ○○○○ 印
�@ 確認する事実を具体的に記載する
いつ、誰から、いくら受け取ったのかを明確にします。
�A 金銭を受領した理由を記載する
金銭を受領した事実だけでは、その金銭が貸付金なのか、贈与なのか、売買代金なのかが明確にならない場合があります。必要に応じて、受領した原因を記載します。
�B 事実の確認と今後の約束を区別する
この文例は、過去の金銭受領の事実を確認するものであり、新たな支払義務を約束する内容ではありません。
金銭を受領した事実を証明することが主な目的であれば、領収書や受領書という書面が適している場合もあります。また、念書に記載した事実が実際の事実と異なる場合には、後日のトラブルにつながる可能性があります。事実確認の念書は、実際に確認できる事実を正確に記載することが重要です。
これらの文例は、念書の基本的な構成や記載方法を理解するためのものです。実際に念書を作成する場合には、文例をそのまま使用するのではなく、個別の事情に合わせて内容を確認する必要があります。
何を目的として作成するのかを確認する
最初に、念書を作成する目的を明確にします。例えば、金銭に関する念書であっても、借入金の存在を確認したいのか、返済を約束したいのか、返済方法を改めて取り決めたいのかによって、必要な記載内容は異なります。
過去の事実と今後の約束を区別する
念書には、過去の事実を確認する部分と、今後の行為を約束する部分があります。例えば、借入金返済の念書であれば、「金50万円を借り受け、現在も未返済であることを認めます」という部分は、借入れと未返済の事実を確認する内容です。
一方、「令和○年○月○日までに返済することを約束します」という部分は、今後の行為についての約束です。この2つを区別することで、念書の内容を整理しやすくなります。
金額・期限・方法を具体的にする
金銭の返済や物品の返却など、履行を伴う約束では、金額、期限、方法などを明確にします。「早急に」「なるべく」「できるだけ」といった表現では、後から解釈の違いが生じる可能性があります。
必要のない条項を追加しない
念書を作成する際、念のためにさまざまな条項を追加したくなることがあります。しかし、書面の目的と関係のない条項や、内容が不明確な条項を追加すると、かえって解釈上の問題が生じる場合があります。特に、違約金、損害賠償、権利の放棄などについては、必要性と法的な有効性を慎重に検討することが重要です。
念書を作成するときには、約束の内容が具体的に理解できる文章を使用することが重要です。例えば、次のような表現には注意が必要です。
「できるだけ早く返済します」
この表現では、返済期限が明確ではありません。
修正例
「令和○年○月○日までに金○○万円を返済します。」
「今後、迷惑をかけません」
この表現では、何をしてはいけないのかが明確ではありません。
修正例
「今後、貴殿の承諾なく、貴殿所有の物品を持ち出さないことを約束します。」
「誠意をもって対応します」
この表現だけでは、具体的な行為や義務が明確になりません。
修正例
「令和○年○月○日までに、貴殿から借り受けている○○を返却します。」
「約束を破った場合は責任を取ります」
この表現では、どのような責任を負うのかが不明確です。違反した場合の対応を定める必要があるときは、具体的な内容を検討します。ただし、違約金や損害賠償については、具体的な金額を記載すれば必ず有効になるわけではありません。法律上の有効性を確認する必要があります。
「一切の異議を申し立てません」
このような包括的な表現は、どのような権利について、どの範囲で異議を述べないのかが不明確になる場合があります。権利の放棄や請求権の処理を目的とする場合には、対象となる権利や法律関係を明確にする必要があります。念書に曖昧な文章を記載すると、後から当事者間で解釈の違いが生じることがあります。文例を参考にする場合でも、実際に何を約束するのかを具体的に整理することが重要です。
念書は、約束や事実関係を確認するために役立つ書面ですが、すべての取り決めに適しているわけではありません。当事者双方が新たな条件を取り決める場合や、複数の権利義務を整理する場合には、合意書や契約書などを作成する方法があります。
返済条件を改めて合意する場合
借主が既存の借入金の存在を認めるだけであれば、念書を利用することが考えられます。一方、貸主と借主が返済期限を延長したり、分割払いの条件を改めて合意したりする場合には、債務承認弁済契約書などを作成する方法があります。
当事者双方が義務を負う場合
例えば、一方が物品を返却し、他方が一定の金銭を支払うという取り決めをする場合です。このように双方の義務を定める場合には、合意書などを作成して、それぞれの義務を明確にする方法があります。
紛争を最終的に解決する場合
すでに当事者間で争いがあり、双方が譲歩して解決する場合には、和解契約書などを作成することが考えられます。例えば、損害賠償金の支払いによって紛争を解決し、一定の範囲で追加請求をしないことなどを合意する場合です。このような場合には、念書だけではなく、合意内容全体を明確にする必要があります。ただし、書面の名称だけで法的効力が決まるわけではありません。
大切なのは、何を確認し、何を約束し、どのような法律関係を明確にする必要があるのかという点です。
念書は、専門家に依頼しなくても自分で作成できる書類です。しかし、一般的な文例を参考にしても、自分の事情にどのように当てはめればよいのか分からない場合があります。また、文例の文章をそのまま使用すると、必要な事項が不足したり、実際の約束とは異なる内容になったりする可能性もあります。このような場合には、行政書士による文案作成を検討する方法があります。
念書に記載する内容は、当事者の関係や約束の内容によって異なります。行政書士は、業務として取り扱える範囲で、ご相談内容や確認された事実関係を整理し、個別の事情に応じた文案を作成します。
口頭で決めた約束は、内容が曖昧になっていることがあります。例えば、「後日返済する」「問題を起こさない」「責任をもって対応する」といった表現です。こうした内容について、何を約束するのか、いつまでに実行するのかなどを整理し、具体的な文章にすることができます。
作成したい内容によっては、念書ではなく、合意書、覚書、債務承認弁済契約書などが適している場合があります。書面の名称にこだわらず、作成する目的に合った書類を検討することが重要です。なお、当オフィスでは、行政書士が取り扱うことのできる範囲で書類の文案作成を行っています。相手方との代理交渉や、紛争解決の代理などは行っていません。
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