
不動産を相続したとき、「相続登記には遺産分割協議書が必要」と聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。しかし、相続登記をするからといって、必ず遺産分割協議書を作成しなければならないわけではありません。遺産分割協議書が必要になるかどうかは、
などによって変わります。特に、相続人が複数いて、相続人全員の話し合いによって「この土地と建物は長男が相続する」と決めたような場合には、その合意内容を明らかにする遺産分割協議書が相続登記において重要になります。
相続登記とは、土地や建物の所有者が亡くなった場合に、相続によって不動産を取得した人へ所有権の登記を変更する法的な手続きです。例えば、父名義の土地と建物があり、父が亡くなった後に長男がその不動産を相続したとします。登記記録上の所有者は、父が亡くなったからといって自動的に長男へ変更されるわけではありません。法務局に相続による所有権移転登記を申請し、登記記録を相続後の権利関係に合わせる必要があります。
そのため、「父が亡くなって10年以上経つが、自宅はまだ父名義のまま」「祖父名義の土地をそのままにしている」というケースについても確認が必要です。
相続人による遺産分割の合意内容を文書にしたものです。相続人が複数いる場合、亡くなった人の財産について、「誰が、どの財産を取得するのか」を相続人全員で話し合って決めることがあります。これが遺産分割協議です。そして、その話し合いによって決まった内容を書面にしたものが遺産分割協議書です。
例えば、父が亡くなり、相続人が母・長男・長女の3人だったとします。相続財産として、
・ 自宅の土地
・ 自宅の建物
・ 預貯金
があり、3人で話し合った結果、「自宅の土地と建物は母が取得する」「預貯金は長男と長女が取得する」という合意をしたとします。この合意内容を文書として明らかにするのが遺産分割協議書です。作成した遺産分割協議書は、相続人同士の合意内容を残すためだけのものではありません。その内容に応じて、「不動産の相続登記」「預貯金の相続手続き」「株式などの相続手続き」などで使用することがあります。ただし、すべての相続で遺産分割協議書が必要になるわけではありません。
例えば、相続人が一人しかいない場合には、そもそも複数の相続人による遺産分割協議をする必要がありません。また、遺言書の内容に基づいて相続手続きをする場合なども、原則として遺産分割協議書を作成せずに手続きを進めることがあります。つまり、「相続が発生した=遺産分割協議書を作る」という関係ではありません。
相続登記=相続した不動産について登記を行う手続き
遺産分割協議書=相続人全員で決めた遺産分割の内容を文書化したもの
という違いがあります。例えば、父が亡くなり、相続人が母・長男・長女だったとします。遺言書はありません。3人で話し合った結果、「父名義の自宅は長男が単独で相続する」と決めました。長男が自宅を取得することになったのは、遺言によって指定されていたからではなく、相続人全員による遺産分割協議の結果です。そこで、長男名義への相続登記を申請する際には、その遺産分割の内容を証明するために遺産分割協議書を使用します。つまり、相続登記における遺産分割協議書の役割は、「相続人全員の協議によって、この不動産をこの人が取得することになった」ということを明らかにすることにあります。
相続人の確認から、不動産、預貯金、株式の記載方法、相続登記や使用する際の注意点まで、ひな形だけでは分からない遺産分割協議書作成の考え方。
相続登記で遺産分割協議書が必要となる典型的なケースは、相続人が複数いて、遺言書がなく、相続人全員の遺産分割協議によって不動産の取得者や取得割合を決めた場合です。具体的には、次のようなケースがあります。
父が亡くなり、母,長男,長女の3人が相続人になったとします。話し合いによって、「父名義の自宅は母が単独で取得する」と決めた場合です。母が単独で取得するという結論は、相続人全員による遺産分割協議によって決まっています。そのため、その内容で相続登記をする場合には、遺産分割協議書が必要になります。
相続人が兄と弟の2人で、法定相続分がそれぞれ2分の1だったとします。しかし、話し合いによって、
兄 4分の3
弟 4分の1
の割合で土地を取得することに合意したとします。この取得割合は法定相続分そのものではなく、相続人による遺産分割協議によって決めたものです。そのため、この割合で相続登記をする場合にも遺産分割協議書が必要になります。
例えば、自宅の土地・建物 → 長男,預貯金 → 長女というように財産ごとに取得者を決めるケースです。この場合も、相続人全員による遺産分割協議によって取得者を決めたのであれば、その内容を遺産分割協議書にまとめることができます。
法定相続は民法で決められた割合で、自動的に承継される仕組みです。例えば、相続人が子2人の場合、持ち分2分の1づつの共有登記が法定相続とおりとなり、協議書は必要ありませんが、特定の不動産をどちらか1人が取得する場合は法定相続ではなく、法定相続分を変更することになり、その合意を証明する書類が必要となります。
相続人が1人しかいない場合、そもそも遺産分割の余地がないため遺産分割協議書は不要です。また、複数相続人がいても他の相続人が相続放棄した結果、最終的に相続人が1人になった場合も同様です。遺産分割は「複数相続人の合意」が前提であり、単独相続では合意の余地がないため、協議書は不要です。
有効な遺言書がある場合は、遺言の内容が遺産分割より優先します。そのため、遺言どおりに相続登記するなら遺産分割協議書は不要です。特に公正証書遺言なら検認も不要です。ただし、遺言書があっても「遺言どおりに分けない」場合は、相続人全員の合意が必要となり、遺産分割協議書が必要になります。
一方、相続登記をする場合でも遺産分割協議書が必要ないケースがあります。
相続人が一人であれば、その一人が相続するため、通常は遺産分割協議を行う必要がありません。したがって、遺産分割協議書も必要ありません。
例えば、父が亡くなり、相続人が母と子2人の場合、法定相続分は原則として、
母 2分の1
長男 4分の1
長女 4分の1
です。この割合どおりの共有状態で相続登記をする場合、遺産分割によって別の取得割合を決めるわけではありません。そのため、遺産分割協議書は必要ありません。
有効な遺言書に、「自宅の土地と建物を長男に相続させる」などと記載されており、その遺言書に基づいて相続登記をする場合には、原則として遺産分割協議書ではなく遺言書等を使用して手続きを進めます。
したがって、「相続登記=遺産分割協議書が必要」ではありません。どのような原因・内容によってその人が不動産を取得するのかによって、必要書類が変わります。
相続登記に使用する遺産分割協議書では、「どの不動産を誰が取得するのか」が明確になっていることが重要です。土地であれば、
所在
地番
地目
地積
などがあります。
建物であれば、
所在
家屋番号
種類
構造
床面積
などがあります。ここで特に注意したいのが、普段使っている「住所」と、不動産登記に使用される「地番」などは同じとは限らないという点です。例えば、
「○○市○○町1丁目2番3号の実家は長男が相続する」
という日常的な表現だけで作成するのではなく、登記事項証明書などによって登記記録上の不動産の表示を確認することが重要です。
遺産分割協議書を作成するときに重要なのが、誰が相続人なのかを正確に確認することです。遺産分割協議は、多数決によって決めるものではありません。例えば、相続人が4人いるのに、そのうち3人だけで、「土地は長男が取得する」と決めても、相続人全員による遺産分割協議にはなりません。特に注意が必要なのは、
前婚の子がいる
認知された子がいる
兄弟姉妹が相続人になる
兄弟姉妹が先に亡くなっていて甥・姪が相続人になる
相続発生後に相続人が亡くなっている
といったケースです。最後のケースでは、相続関係が世代をまたぐ「数次相続」になっていることもあります。そのため、遺産分割協議書を作成する前に、戸籍等を確認して相続人の範囲を確定することが重要です。
・ 相続人が一人 → 通常、遺産分割協議書は不要
・ 遺言書に基づいて相続登記する → 原則として遺産分割協議書は不要
・ 法定相続分どおりに相続登記する → 遺産分割協議書は不要
・ 複数の相続人が話し合って一人が不動産を取得する → 遺産分割協議書が必要
・ 法定相続分とは異なる割合を話し合いで決める → 遺産分割協議書が必要
つまり、判断するときに重要なのは、「相続登記をするかどうか」ではなく、「どのような根拠によって、その人がその不動産を取得することになったのか」という点です。相続人全員による遺産分割協議が取得の根拠なのであれば、その内容を明らかにする遺産分割協議書が必要になります。
不動産を相続する場合の遺産分割協議書は、相続登記を見据えて作成することが大切です。不動産の表示方法など相続登記で困らないためのポイント
遺産分割協議書には、すべての相続にそのまま使用できる一種類の書式があるわけではありません。相続関係や財産の内容によって記載すべき内容は異なります。例えば、
・ 相続人が漏れている
・ 不動産を住所だけで記載している
・ 複数の不動産のうち、どれを誰が取得するのか分かりにくい
・ 相続登記だけを考え、預貯金など他の財産を整理していない
・ 相続人が途中で亡くなり、数次相続になっている
といったケースでは、一般的なひな形だけでは対応しにくいことがあります。一方、相続関係が単純で、相続人全員の合意内容も明確になっている場合には、法務局などが公開している記載例を参考に自分で遺産分割協議書を作成できる場合もあります。重要なのは、自分の相続が一般的なひな形で対応できるケースなのか、それとも個別の相続内容に合わせて文書を作成した方がよいケースなのかを判断することです。
遺産分割協議書を自分で作成できるケースと、自作でよくある問題や専門家への依頼を検討した方がよいケースについては、次の記事で詳しく説明しています。
相続登記をする場合でも、必ず遺産分割協議書が必要になるわけではありません。相続人が一人の場合、法定相続分どおりに登記する場合、遺言書に基づいて登記する場合など、遺産分割協議書を作成せずに手続きを進めるケースがあります。
一方、複数の相続人が話し合いによって不動産の取得者や取得割合を決め、その内容で相続登記をする場合には、その合意内容を明らかにする遺産分割協議書が必要になります。そして、相続登記に使用する遺産分割協議書では、「相続人は誰なのか」「どの不動産なのか」「誰がその不動産を取得するのか」を明確にすることが重要です。さらに、相続財産に預貯金などが含まれている場合には、不動産登記だけではなく、その後の相続手続きまで考えて遺産分割協議書を作成することも検討する必要があります。

遺産分割の内容が決まったら、次は「正確に文書化する」ことが重要です。相続人同士ですでに、「誰が不動産を相続するのか」「預貯金を誰が取得するのか」などについて合意できていても、それだけで遺産分割協議書が完成するわけではありません。実際の書面では、相続関係や財産の内容を整理し、合意した内容が正確に伝わる文章にする必要があります。
特に、「不動産を相続する人は決まっているが、協議書にどう記載すればよいか分からない」「インターネットのひな形を見ても、自分の相続にそのまま使えるのか判断できない」「不動産だけではなく預貯金も含めた遺産分割協議書を作りたい」といった場合には、個々の相続内容に合わせて遺産分割協議書を作成することが重要です。当オフィスでは、相続人間ですでに合意している遺産分割の内容を整理し、遺産分割協議書として文書化するサポートを行っています。相続登記をするためだけの書類として考えるのではなく、その後の相続手続きも含めて、実際の相続内容に合った遺産分割協議書を作成することが大切です。
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遺産分割協議書は”必要になってから”では遅いこともあります。
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相続財産・相続人が確定し協議内容がすでに決まっている場合、遺産分割協議書は「形式の正確性」が重要になります。「誰が」、「どの財産を」、「どれだけ相続するか」といった内容の明確さと、「相続人全員の合意」を証明する署名・押印です。だからこそ、文案の作成に特化し、法的に有効な専門家品質の遺産分割協議書の文案をリーズナブルな費用で作成します。
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代表 行政書士 辻下仁雄
Profile
大学で応用数学を学び、システムエンジニアとしてIT関連企業に勤務。2017年行政書士事務所を開業し現在に至る。
申請取次行政書士 2級ファイナンシャルプランニング技能士