原本,正本,謄本,写しなど契約書関連書類の法律上の差異と効力
皆様はプライベートなやり取りや、日々の暮らしなどで、「この書類は原本?,謄本?、それとも写し?」といったことを意識することはあまり無いと思います。契約書に関しても、私人間の契約で、私人だけで作成した契約書では原本とその写しが考えられるだけです。
 
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皆様はプライベートなやり取りや、日々の暮らしなどで、「この書類は原本?,謄本?、それとも写し?」といったことを意識することはあまり無いと思います。契約書に関しても、私人間の契約で、私人だけで作成した契約書では原本とその写しが考えられるだけです。

原本,写し,正本,謄本,抄本とは

原本

文書の作成名義人が作成した最初の書面で、いわゆるオリジナルそのもののことです。契約書の場合、契約した当事者が署名、あるいは記名・押印して作成された最初の契約書のことです。イメージしやすいですね。ただ、1通とは限りません。契約書の最後も文言としてよくある「本契約締結の証として、本契約書を2通作成し、甲乙相互に署名又は、記名・押印のうえ、各1通を保有する。」とある場合、契約書を最初に2通作成したことになり、原本が2通あることになります。


写し

いわゆるコピーのことです。もう少し固く表現すると、「原本に基づいて作成され、原本と同じ記載内容を有する書面」ということになります。ざっくり言うと書面はオリジナルの原本とその写しの2種類が考えられるだけで、原本以外は全て写しということになります。写しが効力を発揮できるのは、原本が存在していた、あるいは存在するという前提があるからです。この写しに、正本,謄本,抄本というものがあります。


正本

正本は、裁判所書記官や公証人など公証権限のある者が作成した原本の写しのことをいいます。裁判所の判決,決定などを記載した書面、公証役場で公証人が作成した書面のうち、特に正本として作成したもののことです。法令によって原本と同じ効力を与えられています。「原本と同じ効力」ということですから、原本に法的な効力があることが前提です。正本も厳密に言えば写しですが、権限ある役人や公証人が作成した書面で、原本と同じ効力が与えられていますから私人の作成した写し(コピー)とはちょっとわけが違います。


謄本,抄本

謄本,抄本も本来は写しですが、「原本に基づいて作成され、原本と同じ記載内容を有し、原本と相違はありません」ということを公証権限のある者が認証したもののうち全部丸ごと写したものを謄本と呼び、一部だけを写したものを抄本と呼んでいます。

 

正本も謄本も抄本も写しですが、いづれも公証権限のあるものが作成,認証します。契約書については、私人間の契約で、私人だけで作成した契約書の書面については、原本とその写しの二種類が考えられるだけです。



契約書の写しの役割と効力の限界

私人だけで作成した契約書は、契約の相手方に履行を求めるときの証拠書面です。相手方が任意に履行しない場合に裁判所に訴えを起こしたときの証拠書面にすぎません。契約書の写しが効力(この場合の効力とは、証拠としての効力)を発揮できるのは、契約書の原本が存在していた、あるいは存在するという前提があるからです。たとえば、金銭借用書の原本を紛失してしまって、手元にその写ししか残っていなかった場合、相手方が、原本が存在しないのは、もうすでに借入金を完済して、借用書の原本を受け取り、これを破棄した、という主張が考えられます。

 

公証役場で公証人に作成してもらった公正証書の契約書の場合は、当事者は公証人に謄本を請求することができます。

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