/実家を相続したら何から始める?/実家を相続したときの名義変更

親が亡くなり、実家を相続することになったとき、
「親名義の家はどうやって自分の名義に変更するのか」
「父名義の家をそのままにしておいても大丈夫なのか」
「実家の名義変更にはどんな書類が必要なのか」
と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。亡くなった親の名義になっている土地や建物は、相続が発生しただけで登記名義が自動的に相続人へ書き換えられるわけではありません。実家の名義を相続人へ変更するためには、法務局で”「相続登記」”を行います。ただし、相続登記をする前に確認しなければならないことがあります。それが、「実家を誰が相続するのか」ということです。遺言書がなく相続人が複数いる場合には、相続人で遺産の分け方を話し合い、その結果に基づいて実家を取得する人を決めることがあります。そして、その話し合いの結果を書面にしたものが”遺産分割協議書”です。
父や母が亡くなると相続が開始します。しかし、親名義の実家について、登記簿に記録されている所有者の名前が自動的に子どもなどの相続人へ変更されるわけではありません。たとえば、父名義の実家について、父が亡くなった後に長男がその家に住み続けていたとしても、それだけで登記名義が父から長男へ変更されるわけではありません。登記上の名義を変更するためには、法務局に相続登記を申請する必要があります。
実家の名義変更を考える場合、最初に確認したいのが現在の登記名義人です。「父が住んでいた家だから父名義だろう」と思っていても、実際に登記を確認すると、
・ 土地は祖父名義
・ 建物は父名義
・ 土地は父と母の共有
などとなっていることがあります。特に、何十年も前から所有している実家では、以前の相続時に名義変更がされておらず、祖父母など前の世代の名義が残っているケースがあります。その場合、今回亡くなった親の相続だけではなく、以前に発生した相続についても確認しなければならないことがあります。そのため、親の家の名義変更を始めるときには、登記事項証明書などによって土地と建物それぞれの名義を確認することが重要です。
亡くなった親が所有していた土地や建物について、相続によって取得した人へ登記名義を変更する手続を、一般に相続登記といいます。「亡くなった親の家の名義変更をしたい」と考えている場合、必要になるのはこの相続登記です。相続登記は、不動産の所在地を管轄する法務局に申請します。
2024年4月1日から、相続登記の申請が義務化されています。相続によって不動産を取得した相続人は、原則として、自己のために相続が開始したことを知り、かつ、その不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請する必要があります。また、遺産分割が成立して不動産を取得した場合にも、遺産分割が成立した日から3年以内に、その内容を踏まえた登記を申請する義務があります。正当な理由なく申請義務に違反した場合には、10万円以下の過料の対象となる可能性があります。そのため、「実家を売る予定がないから名義変更しなくてもいい」「誰も住んでいないので、とりあえずそのままにしておく」という考え方ではなく、相続が発生したら必要な手続きを確認することが大切です。
実家の名義変更をするときに、いきなり相続登記の申請書を作成するわけではありません。まず、「誰の名義に変更するのか」を明確にする必要があります。実家を誰が取得するのかは、遺言書の有無や相続人の状況、遺産分割の内容などによって異なります。
亡くなった親が遺言書を残しており、「自宅の土地及び建物を長男○○に相続させる」などと定めている場合には、その遺言の内容を確認して手続きを進めます。したがって、相続人同士で実家を誰が取得するか話し合う前に、まず遺言書が残されていないか確認することが重要です。
遺言書がなく相続人が複数いる場合には、法定相続分による相続登記をする方法のほか、相続人全員で話し合い、誰が実家を取得するのかを決める方法があります。たとえば、父が亡くなり、母・長男・長女の3人が相続人だったとしても、必ず3人の共有名義にしなければならないわけではありません。相続人全員が合意すれば、「実家の土地と建物は長男が取得する」という遺産分割をすることもできます。
遺言書がなく、実家を法定相続分とは異なる形で相続する場合には、相続人全員で遺産の分け方について話し合います。これが遺産分割協議です。たとえば、父が亡くなり、長男・長女・次男が相続人だったとします。実家には長男が住んでおり、長女と次男はそれぞれ別の場所で生活しているとします。この場合、
実家の土地・建物 →長男
預貯金 →長女・次男
という分け方について相続人全員で合意することも考えられます。また、実家の価値が大きく、他の財産だけでは相続人間の調整が難しい場合には、実家を取得する相続人が他の相続人に金銭を支払う方法が検討されることもあります。注意したいのは、「長男だから実家を相続する」「親と同居していたから自分の名義にする」というだけで、一人の判断によって遺産分割の内容を決められるわけではないということです。遺産分割協議によって取得者を決める場合には、相続人全員の合意が必要です。そのため、まず戸籍等によって相続人を確認し、そのうえで実家を含む相続財産をどのように分けるのかを話し合うことになります。
相続人全員の話し合いによって実家を取得する人が決まったら、その内容を遺産分割協議書として書面にします。たとえば、「父名義の実家は長男が相続する」という合意が成立したのであれば、実際の遺産分割協議書では、その土地・建物を特定できるように記載します。そして、相続人全員が合意したことを示すため、相続人が署名または記名し、実印を押印する方法が一般的です。相続登記に使用する場合には、遺産分割協議書とともに印鑑証明書も必要になります。
家族の間で、「実家は長男のものにしよう」と決まっていても、それだけで登記上の名義が長男へ変わるわけではありません。相続登記を行うためには、その取得原因や取得者を確認できる書類を整える必要があります。遺産分割によって実家を取得する人を決めた場合、その重要な書類の一つが遺産分割協議書です。つまり
相続人を確認する
↓
実家を誰が相続するか話し合う
↓
遺産分割協議書を作成する
↓
必要書類をそろえる
↓
相続登記を申請する
という流れになります。
遺産分割協議書を相続登記に使用する場合、特に注意したいのが不動産の記載方法です。単に、「実家は長男○○が相続する」と記載するだけでは、どの不動産を取得するのかを十分に特定できない可能性があります。普段使用している住所と、不動産登記に記録されている土地の地番や建物の家屋番号は同じとは限りません。そのため、不動産を遺産分割協議書に記載するときには、登記事項証明書などを確認して、対象となる不動産を正確に特定することが重要です。たとえば土地については、
所在
地番
地目
地積
などを確認します。建物については、
所在
家屋番号
種類
構造
床面積
などの登記事項を確認します。一般的には「実家」という一つの財産として考えますが、不動産登記では土地と建物は別の不動産です。したがって、「土地だけ遺産分割協議書に記載して建物を記載していなかった」といったことがないよう注意が必要です。また、私道の持分など、実家と一緒に相続すべき不動産が別に存在する場合もあります。相続登記で使用する遺産分割協議書を作成する場合には、「実家」という日常的な表現ではなく、登記された不動産を一つずつ確認することが重要です。
相続による実家の名義変更では、相続の方法によって必要書類が異なります。遺言書による相続なのか、法定相続分による相続なのか、遺産分割協議による相続なのかによって提出する書類が変わるためです。ここでは、遺産分割協議によって相続人の一人が実家を取得するケースを中心に、主な書類を説明します。
相続人を確認するため、原則として亡くなった人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍などを準備します。法定相続情報一覧図の写しを利用できる場合もあります。
相続人であることを確認するため、相続人の戸籍謄本等が必要になります。具体的にどの戸籍が必要になるかは相続関係によって異なります。
相続人全員の話し合いによって実家を取得する人を決めた場合、その内容を記載した遺産分割協議書を使用します。相続登記に使用する遺産分割協議書では、実家の土地・建物を登記情報に基づいて特定することが重要です。
遺産分割協議書を相続登記に使用する場合には、原則として遺産分割協議書に実印を押印した相続人の印鑑証明書を添付します。
実家を取得して新しい登記名義人となる相続人について、住民票などの住所を証明する書類が必要になります。
相続登記では登録免許税を計算する必要があるため、固定資産の評価額を確認できる資料が必要になります。必要となる資料の取扱いは申請先の法務局や自治体等で確認します。
以上の書類などをもとに登記申請書を作成し、不動産所在地を管轄する法務局へ申請します。
なお、これは一般的な遺産分割による相続登記を想定した主な書類です。遺言書の有無、相続人の構成、数次相続の発生、不動産の状況などによって必要書類は異なります。

実家の相続では、「遺産分割について決めた内容を書面にすること」と、「その書類を使って不動産の相続登記をすること」は分けて考える必要があります。専門家に依頼する場合も、それぞれの業務範囲があります。行政書士は、権利義務に関する書類の作成を業務としており、その代表的な書類の一つに遺産分割協議書があります。相続については、法的紛争段階にある事案や税務・登記申請業務など他の法律で制限される業務を除き、遺産分割協議書などの書類作成や、その前提となる調査等を取り扱うことができます。したがって
「相続人同士で実家を誰が相続するかは決まっている」
「話し合いはまとまっているが、遺産分割協議書をどのように作ればいいのか分からない」
「実家だけでなく預貯金なども含め、決まった遺産分割の内容を書面にしたい」
といった場合には、行政書士へ遺産分割協議書の作成を依頼する方法があります。一方、相続登記について依頼したい場合には司法書士の業務となります。したがって、「相続登記の申請そのものを専門家に任せたい」「法務局に提出する登記申請書を作成してほしい」という場合には、司法書士へ依頼します。もちろん、相続人本人が自分で相続登記を申請することもできます。大切なのは、遺産分割協議書の文案作成と、相続登記の代理申請は別の業務であることを理解したうえで、必要なサポートを選ぶことです。
親名義の実家を相続人の名義に変更するためには、相続登記を行います。しかし、遺言書がなく、相続人同士の話し合いによって実家を取得する人を決める場合には、登記申請の前に、「誰が実家を取得するのか」を明確にし、その合意内容を遺産分割協議書として書面にすることが重要です。
当オフィスがサポートするのは、相続登記そのものではなく、その前提となる遺産分割協議書の文案作成です。相続人間で話し合いがまとまっているものの、
「実家を相続することは決まったが、協議書をどう書けばいいのか分からない」
「土地や建物をどのように記載すればよいのか分からない」
「実家以外の預貯金なども含めて、決まった内容を一つの協議書にまとめたい」
という場合に、合意された内容を確認しながら遺産分割協議書の文案作成をサポートします。
実家を誰が相続するかは決まっている。
次は、相続登記に進むための遺産分割協議書を整えたい。そのような方は、遺産分割協議書作成サービスをご確認ください。
実家を誰が相続するか決まった方へ
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代表 行政書士 辻下仁雄
Profile
大学で応用数学を学び、システムエンジニアとしてIT関連企業に勤務。2017年行政書士事務所を開業し現在に至る。
申請取次行政書士 2級ファイナンシャルプランニング技能士