/実家を相続したら何から始める?/実家の土地が祖父名義のままの場合はどうする?

実家の土地について登記を確認したところ、すでに亡くなっている祖父の名義のままだった――。
古くから家族が住んでいる土地では、このようなケースがあります。さらに、「祖父が亡くなった後、父も亡くなっている」「祖父の相続人だった叔父や叔母も亡くなっている」「誰と遺産分割の話し合いをすればよいのかわからない」というケースでは、通常の相続より相続関係が複雑になります。大切なのは、現在の家族だけを見て「誰の名義にするか」を決めるのではなく、祖父が亡くなった時点まで戻って相続関係を順番に確認することです。祖父の相続が終わらないうちに、その相続人であった父などが亡くなっている場合には、「数次相続」と呼ばれる状態になっていることがあります。ここでは、実家の土地が祖父名義のままになっている場合について、誰が相続人になるのか、世代をまたいだ相続をどのように整理するのか、遺産分割協議書を作成するまでの流れを順番に説明します。
現在は父や母、あるいは子の世代が実家に住んでいるにもかかわらず、土地の登記名義人を確認すると祖父の名前になっていることがあります。例えば、
祖父が土地を所有
↓
祖父が死亡
↓
相続登記をしないまま父が実家に居住
↓
その後、父も死亡
↓
現在は子が実家を管理
というケースです。この場合、「父から子への相続」だけを考えればよいとは限りません。そもそも登記上の所有者は祖父です。したがって、まず、祖父が亡くなったときに誰が相続人だったのかを確認する必要があります。また、不動産の所有者が亡くなったからといって、登記名義が自動的に相続人へ変更されるわけではありません。祖父が亡くなった後も相続登記をしていなければ、登記記録上は祖父名義のまま残っていることがあります。「固定資産税を父が払っていた」「父が何十年も実家に住んでいた」「家族全員が父の土地だと思っていた」という事情だけから、現在必要となる相続手続きを判断することはできません。まず登記事項証明書などで不動産の名義を確認し、祖父の死亡時点から相続関係を整理することが出発点になります。
祖父名義の土地だからといって、現在その実家に住んでいる孫だけで相続手続きを進めることはできません。最初に確認するのは、祖父が亡くなった時点の相続人です。例えば、祖父が亡くなった時点で、
がいたとします。この場合には、まず祖父についての相続関係を確認します。重要なのは、現在生きている親族だけを確認するのではなく、相続が発生した当時の家族関係から確認することです。そのためには、通常、祖父の出生から死亡までの戸籍などを確認し、配偶者や子などの相続人を特定していきます。例えば、家族が知らなかった祖父の子が戸籍上確認される可能性もあります。また、祖父より先に子が亡くなっており、その子に子どもがいる場合には、代襲相続について確認しなければならない場合もあります。したがって、「祖父の土地だから父が相続したはず」と考えて先に進むのではなく、”祖父死亡 → その時点の相続人を確定”という順番で確認することが重要です。
祖父の相続人を調べたところ、その一人であった父もすでに亡くなっている場合があります。例えば、
祖父が死亡
↓
祖父の相続人は祖母・父・叔父
↓
祖父の遺産分割をしないまま父が死亡
というケースです。ここで注意したいのは、「父が亡くなったから、父の代わりに長男だけが祖父の遺産分割に参加する」と単純には考えられないことです。父が祖父の相続について有していた相続人としての地位について、今度は父自身の相続関係を確認する必要があります。例えば、父が亡くなったときの相続人が、
であれば、父の死亡によって生じた相続について、この3人を確認する必要があります。さらに、叔父も亡くなっているのであれば、叔父についても同じように相続関係を確認する必要があります。つまり、祖父の相続だけを見るのではなく、”祖父の相続 → 父の相続 → 必要であれば叔父・叔母などの相続”と、時間の流れに沿って一つずつ確認していきます。祖父が亡くなってから長期間相続手続きをしていない場合、相続関係が一世代では終わらず、二世代、三世代へ広がっていることがあります。これが、祖父名義の土地を長期間そのままにしておくことで相続手続きが複雑になりやすい理由の一つです。
ここまでのように、最初の相続について遺産分割が終わらないうちに、その相続人が亡くなり、さらに次の相続が発生することがあります。このような状態を一般に””「数次相続」””と呼びます。例えば、
祖父Aが死亡
↓
相続人は妻B・長男C・次男D
↓
祖父Aの遺産分割をしないまま長男Cが死亡
↓
長男Cの相続人は妻E・子F・子G
というケースです。祖父Aについての相続が「第一次相続」。その遺産分割が終わらないうちに発生した長男Cについての相続が「第二次相続」となります。このように相続が連続しているため、現在の相続人だけを見て遺産分割協議書を作ることはできません。誰がどの相続について、どのような立場で協議に参加するのかを整理する必要があります。
なお、「祖父名義のまま」というだけで、必ず数次相続になっているわけではありません。祖父の相続人が全員存命であれば、数次相続が発生していない場合もあります。また、祖父より先に父が亡くなっていた場合には、父の死亡時期などによって代襲相続など別の問題になります。したがって重要なのは、誰が先に亡くなったのかです。祖父、父、叔父、叔母などの死亡年月日を確認し、相続が発生した順番を整理することで、初めて現在必要な遺産分割の形が見えてきます。
数次相続で特に難しくなるのが、「現在、誰と遺産分割協議をすればよいのか」という問題です。通常の相続であれば、被相続人の相続人を確定し、その相続人全員で遺産分割協議を行います。ところが数次相続では、最初の相続人の一人が遺産分割前に亡くなっています。そのため、その死亡した相続人について発生した次の相続関係まで確認する必要があります。例えば、
祖父A死亡
↓
相続人:父B・叔父C
↓
遺産分割前に父B死亡
↓
父Bの相続人:母D・長男E・次男F
というケースを考えます。この場合、祖父Aの遺産分割について、父B本人はすでに亡くなっているため参加できません。父Bが祖父Aの相続について有していた地位を誰が承継しているのかを、父Bの相続関係から確認していきます。さらに、祖父の相続人だった叔父も死亡している父の相続人だった母もその後死亡しているといったケースでは、さらに相続関係が広がる可能性があります。そのため、数次相続では最初に「遺産分割協議書の書き方」を考えるのではなく、
という順番で相続関係を整理することが重要です。相続人の一人でも欠いたまま遺産分割協議書を作成すれば、その後の相続手続きに使用できない可能性があります。
通常の遺産分割では、「父が亡くなり、母と子2人が相続人」というように、一つの相続について相続人を確認し、誰がどの財産を取得するのかを協議書に記載します。一方、数次相続では、最初の被相続人についての遺産分割が終わる前に、その相続人が亡くなっているという点が大きく異なります。例えば、祖父の相続人だった父が死亡しているのであれば、協議書を作成する際にも、
という相続関係を整理する必要があります。そのため、単純な相続を前提としたインターネット上の遺産分割協議書のひな形に、現在の相続人の氏名を入れるだけでは対応できないことがあります。また、「祖父の相続と父の相続について一つの遺産分割協議書にまとめるのか」「相続ごとに協議書を作成するのか」についても、実際の相続関係や遺産分割の内容を確認して文案を検討する必要があります。数次相続の遺産分割協議書では、単に文章の書き方が難しいのではなく、その前提となる相続関係を正確に整理することが重要です。
祖父名義の土地について相続手続きを進める場合には、おおむね次のような順序で確認します。
まず、土地・建物の登記記録を確認します。「実家は祖父名義」と思っていても、
となっている場合や、複数の土地のうち一部だけ祖父名義となっている場合があります。遺産分割協議書を作成する前に、対象となる不動産を正確に確認します。
戸籍等から、祖父が亡くなった時点の相続人を確定します。現在の親族だけではなく、祖父の死亡時点まで遡って確認することが重要です。
祖父の相続人だった父・叔父・叔母などがその後亡くなっている場合には、それぞれについて次の相続関係を確認します。ここで数次相続が発生しているかどうかが見えてきます。
祖父の相続と、その後に発生した相続を順番に整理し、遺産分割協議に必要となる当事者を確認します。
相続人等の間で、「現在実家に住んでいる孫が土地を取得する」など、実際の遺産分割について話し合います。
誰がどの不動産を取得するのか決まったら、相続関係と合意内容に合わせて遺産分割協議書を作成します。
遺産分割協議書など必要な書類を整え、法務局で相続登記を行います。なお、2024年4月1日から相続登記は義務化されています。それ以前に発生した相続も対象であるため「祖父が30年前に亡くなっているから関係ない」ということにはなりません。古い相続についても、相続登記がされていないのであれば、現在の制度を踏まえて手続きを進める必要があります。

祖父名義の土地を長期間そのままにしているケースでは、単純な遺産分割協議書では対応できないことがあります。例えば、
という二段階だけでなく、
というケースもあります。さらに、祖父の子が5人いて、そのうち3人がすでに亡くなっているというケースでは、それぞれの相続関係を確認しなければならない可能性があります。相続が何世代にもわたるほど、「現在の相続人は誰なのか」「誰がどの立場で協議に参加するのか」「どの相続について遺産分割を行うのか」「最終的に誰が不動産を取得するのか」という関係が複雑になります。そのため、数次相続の遺産分割協議書を作成するときは、最初からひな形に文章を書き込むのではなく、
相続関係を整理する
↓
遺産分割に参加する人を確認する
↓
誰が何を取得するのか確認する
↓
その内容に合わせて協議書の構成を決める
という順序で考えることが重要です。相続関係は確認できたものの、数次相続をどのように遺産分割協議書へ記載すればよいかわからない方へ祖父名義の土地について、「相続人は調べた」「親族間で誰が土地を取得するかも決まっている」「争いはない」という場合でも、数次相続では遺産分割協議書の作成方法に迷うことがあります。特に、
といったケースです。当オフィスでは、相続人間ですでに遺産分割の内容について合意できている方を対象として、確認された相続関係と合意内容に合わせた遺産分割協議書の文案作成をサポートしています。数次相続では、単に一般的な遺産分割協議書のひな形を書き換えるのではなく、世代をまたいだ相続関係を整理したうえで、そのケースに合った文書を作成することが重要です。「誰が土地を取得するかは決まっている。しかし、数次相続をどのように協議書へ記載すればよいかわからない」という場合には、遺産分割協議書の作成だけを専門家へ依頼する方法があります。
相続関係は確認できたものの、数次相続をどのように遺産分割協議書へ記載すればよいかわからない方へ
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大学で応用数学を学び、システムエンジニアとしてIT関連企業に勤務。2017年行政書士事務所を開業し現在に至る。
申請取次行政書士 2級ファイナンシャルプランニング技能士